小説
6
「あー、真面目な香山くんは、一時間サボるのにも綿密な計画が必要なのな」
「ふむ、その通りだ。だが、今回はそれだけじゃない」
「まだ何かあるの?」
「ああ。たっちゃん、ちょっとついて来てくれ」
「だからたっちゃんって…」
「ん?どうかしたかたっちゃん」
「……いや、もういーや」
呼び名を改めさせることは諦め、素直に奴の後をついて行く。
ごく一般的な私立高校にもかかわらず、ここの図書室は馬鹿広い。
奥の方へ進むと、こんなの誰が読むんだっていうようなこの地域の歴史年鑑や郷土資料らしきものがぎっしりと並べてある。
奴が足を止めたのは、もう背表紙を見ただけではどんな内容だか分からない本ばかりが並んでいる一角だった。
「ここ、何?」
「死角だ」
「ああまぁそうね。で、何かある訳?」
「ちょっと待っていてくれ」
隅の方で何かゴソゴソし始める香山くん。
手元にあるのは、黒い…大きめのバッグ?
あらかじめここに置いておいたのだろうか。
まったく、こいつが何をしたいんだかちっとも検討が付かない。
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