小説
4
澤木に兄貴、イアンさんも身近と言えば身近な人。
自分の周りに三人も同性を恋愛対象とする人間がいるなんて……
「はー…」
「悩み事か?」
「うわっビビった!あーなんだ、香山くんか」
「悩み事か?」
ビクッと身体を揺らした俺を気にすることもなく同じ台詞を口にするこいつは、図書室の住人香山くん。
つまり、図書委員だ。
学年は、多分俺と同じ。
“多分”が付くのは、つい最近までこんな奴見たこともなかったから。
けれど学年ごとに違うネクタイの色から、同じ学年だと判断した。
黒縁眼鏡に、見ていてこっちが苦しくなるくらいにきっちりと着込まれた制服。
先週突然屋上が立入禁止になり、サボリ場をこの図書室に変えていなければ、こいつと話すことなど一生なかっただろう。
それくらい、俺と香山くんとでは人種が違っている。
サボリ常習犯の俺とは異なり、絵に描いたように真面目なこいつとは、全く。
「って、今授業中じゃん。香山くん、こんなとこで何してんの?」
「悩み事か?」
「…まだそれ引っ張る?まぁ、悩み事と言えば悩み事だけど…大したことじゃねぇよ」
「そうか」
「で?真面目な香山くんが、授業中になんでこんなとこに?」
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