小説 18 「おい…っ」 口を塞いでいたとはいえ、今のは流石に声が響いた。 そういえば、さっきから外が妙に静かだ。 もしかして、感付かれたか…? 「あの、大丈夫ですか…?」 「…っ」 (やっぱり…っ) ここは、シカトしておくべきなのか。 いや、それで余計に心配されて、人を呼んでこられでもしたらますます困る。 でもそしたらその間に逃げりゃあいいのか…? 「もしかして、出られなくなってるとか…?僕でよければ手伝いますけど…」 こいつはどうやら、身障者が個室の中で苦戦していると思っているらしい。 だったら助けなんていらねぇってさっさと答えて、早くここを出て行ってもらえば―― 「…だ、いじょうぶです」 「!?」 答えたのは、俺ではなくて雅だった。 口を塞いでいた俺の手を掴み、俯きながら言葉を紡ぐ。 「大丈夫、ですから。ん、ご心配、ありがとう、ございます…っ」 声が、震えている。 語尾だって上擦っていて、とても大丈夫だと思える返答ではない。 「でも…」 「本当に、大丈夫ですから…!」 [前へ][次へ] [戻る] |