小説
6
「わん!わわん!」
(おい、どういうことだ!)
「くぅーん…」
(ど、ういう…?)
「ガウガウ!」
(何も思わねぇのかよ!)
「くぅ?…わんわん!」
(なに、も…?あっ!お幸せ、に…!)
は、はぁ――!?
後ろからやって来たミケが、再び俺に頭を寄せる。
おかしい、やっぱりおかしいぞ。
こんなはずじゃ……
「えっと、篠崎さん…?」
「はぁ、はぁ…、ごめんね?ほらビッグ、ちびを離して?」
俺はご主人に引き起こされ、愛しのちびと離れ離れにされた。
けれど、もう一回飛び付こうという気力は湧いてこない。
「…助かります」
「いえいえ、本当にいつもビッグがごめんね」
「いや、大丈夫、です。じゃあまた…」
「うん、また」
今度こそ本当に去っていくちび。
前足の脇に手を突っ込まれ、後ろ足だけが地面に着いている状態で、俺はようやくこの作戦が失敗したことを悟る。
ミケはそんな俺を気にする様子もなく、俺の後ろ足をいつもより強めにペロペロと舐め続けていた。
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