小説 3 「わん!わんわん!」 (散歩!散歩に行きたい!) 「ん?お腹すいたの?」 ち、違う! 「わんわん!」 (今から散歩!) 「ああ、ミケが来てくれて嬉しいんだね」 それもちょっとはあるけど、やっぱり違う! 「うーっ」 (散歩だよー!) 俺は繋がれている鎖を銜えて唸ってみせる。 ちょっと鉄臭いけど我慢だ。 「ウウーッ!」 (さ・ん・ぽだってば!) 「あ、もしかして散歩に行きたいの?」 伝わった! 異種間の交流というものは、なかなか大変だ。 「最近ビッグは朝からの散歩が好きだね。あ、もしかしてちびがいるからかな?」 なんだ、それは分かってくれてんのか。 取ってきたリードを首輪に繋ぐご主人を見つめてちょっとだけ感心しながらも、俺はワクワクした気持ちを抑えきれないでいた。 「よし、じゃあ行こっか」 ご主人から声がかかった瞬間、物凄いスピードで駆け出す。 慌ててついてくるご主人とミケを尻目に、俺は勢い良く家の前の道路へと飛び出した。 [前へ][次へ] [戻る] |