小説
8
ここで、社長に何らかの弱みを握られて身体を許し、そのことをネタに俺にも関係を迫られている三上さん……と考えてみる。
(可哀相…!)
自分も関係者でありながらこんなことを言うのはなんだけど、かなり不憫に思えてくる。
三上さんって、エリートの道を歩むためにきっと色んなことを我慢しているんだろうな。
昼飯のことにしたってそうだし……
(…あ、いかんいかん。今はとにかく仕事だ!)
折角一人で任されるようになったのに、ボケッとしてたらまた先輩と組まされることになってしまう。
先輩にも迷惑をかけるし、給料も下がっちゃうし、何よりこんな俺にも独り立ちをさせてくれたうちの社長にがっかりされるのはいただけない。
空には、気持ちを落ち着ける効果があると思う。
ビルの高層階の窓は、危険防止のためはめ殺しになっていることも多い。
一日中パソコンに向き合ったり、資料と睨めっこをしている人達が、ふと窓の外を見たときに広がる青空。
その空を、窓越しであっても澄みきったものにするために、俺は窓を拭く。
ちょっとキザだけどそう考えると俄然やる気が湧いてきて、ようやく作業に集中することが出来たのだった。
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