小説
5
「…っ」
――ゴンッ
反射的に頭を上げた瞬間、低い天井部分で頭を打った。
「いったぁ…」
「大丈夫ですか…?」
「あ…すみません、大丈夫です」
(なんだったんだ、今の…?)
まるで誰かの手に撫でられたような感覚だった。
けれど、ここには自分以外は依頼主の彼しかいないし、そんなはずはない。
ただの気のせいかと思い直し、もう一度頭を奥に突っ込むと、今度は確かにすぐ後ろから加納さんの声がした。
「コーヒーが出来たので、ここに置いておきますね」
「あ、ありがとうございま、す……?」
背中に、何か暖かい物が触れているような気がする。
何やら、硬くて小さなもの。
気になって上半身を外に出そうとすると――
「あ、動くと危ないですよ。まだ熱いですから、零れたら火傷してしまいます」
「は…?」
言葉から察すると、俺の背中に乗っているのは彼が入れてくれたコーヒーなのだろうか。
だが、何故そんなことをするのか分からない。
冗談を言ったりしたりするようなタイプには見えないんだが…
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