[携帯モード] [URL送信]

小説







「いらっしゃい」

「……別に、お前に会いに来た訳じゃないから。ただ、お前が課題手伝ってくれるって言うから…」

「うん、分かってるよ。ほら入って?」

「…お邪魔します」



普段は口が悪いけれど、礼儀正しく挨拶をして脱いだ靴まできちんと揃えるところは、百合子さん達両親の努力の賜物だと思う。
先程とは違う制服姿で俺の後を居心地悪そうについてくる様子が、なんだか可愛くて仕方ない。



「……相変わらず、スゲー部屋。一人で住むには広すぎ」

「何なら一緒に住んじゃう?」



百合子さんの実家は結構な田舎にあるが、亮太くんの将来を考えて、彼が小学校に入学するのを機にこの街に戻ってきていたらしい。
そうでなければ、俺が亮太くんと再会することはなかった。
彼女の判断に感謝だ。



「す、住まねーよ!」

「まぁそれは亮太くんが高校を卒業してから、かな」

「だから住まないって!」

「はは、分かった分かった。それより、飲み物何がいい?」

「……コーヒー。ブラック」

「ココアじゃなくて?」

「…っコーヒーでいい!」

「うん、了解。じゃあちょっと待っててね」



亮太くんは、甘いものが好きだ。
けれどそれを恥ずかしいことだと思っているのか、素直に口に出すことはない。
本当はブラックコーヒーなんてものが苦手なこと、俺はちゃんと知っている。





[前へ][次へ]

9/63ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!