小説
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「亮太くん、章介って呼んでくれるのも凄く嬉しいんだけど、たまには――」
「呼ばねぇよ!」
……残念。
折角、彼だけに許される特別な呼び方があるというのに。
「ったく、毎回ここに配達させられる俺の身にもなってみろよ!」
「ごめんごめん。だから、本当にお疲れ様」
ピザを受け取って横の棚の上に置き、彼の腕を引いて扉の内側へと招き入れる。
そして、寒い中バイクでここまで配達に来てくれた彼を抱き締める…つもりだったのだが、見事に身を捩って逃げられてしまった。
「あ」
「な、何してんだよ!」
「亮太くん、身体冷えちゃってるね」
「だから、それはお前のためにピザ持ってきたからだろ!?」
「俺の、ため…?」
「〜〜っ、喜ぶな!」
そんなことを言われたって、それは無理な話だ。
彼の些細な一言が、俺にとっては何よりも嬉しい。
「とにかく!今後一切ピザなんか頼むんじゃねぇ!」
「だって亮太くんに会える時間が増えるし…」
「そんな理由で注文すんな!それに…」
「…?」
「……ピザなんて油っこいもんばっか食べてたら、身体壊しちまうだろ!」
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