小説
5
「三上さん!俺、こう見えて料理得意なんです!」
突然そう口にした俺を、三上さんは不審そうな目で見やる。
「えっとだからその……俺が三上さんの分の弁当も作ります!」
「は…?」
「ほら、見てください!実はこれも俺の手作りで…!前に居酒屋でバイトしてたことがあって、その時もキッチンで結構評判よくて…って三上さん…?」
必死になって説明していると、彼の手が俺の弁当に伸びてきて、その男とは思えないほど細くて綺麗な指が唐揚げをつまんだ。
そのままそれは、彼の口の中に運ばれる。
「あの…」
「……美味いな」
「…ッで、でしょ!唐揚げは特に自信があるんです!」
彼から誉め言葉を貰えたことに、俺の気持ちは昂揚する。
三上さんが何かを誉めるなんて、滅多にあることではないと思うから。
「じゃあ次から弁当作ってきます!毎日は無理だけど、ここで仕事があるときは絶対に!」
「…ああ」
なんだろう。
凄く嬉しい。
正直、受け入れてくれるとは思っていなかった。
数あるおかずの中で一番に唐揚げを選んだってことは、三上さんは唐揚げが好きなのかな…?
初回の弁当にはたくさん唐揚げを入れてあげようと、こっそり思った。
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