小説
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しまった。
折角あの三上さんが話を聞こうとしてくれているのに、それこそこれは口実だ。
能天気な俺に、特に悩みはない。
強いて挙げるなら、彼との関係くらいなもので…
彼に相談するような内容ではないことは確実だった。
「あーえっと…とりあえず、飯食いましょう…!」
誤魔化すように素早く弁当を広げ、いただきますと手を合わせる。
その様子を呆れたように見ていた彼も、渋々自分の昼飯を取り出した。
(良かった、まだここにいてくれるんだ…)
ホッと息を吐き出す。
だがそれと同時に、俺の目には物凄く気になるものが映った。
「あの、三上さん…昼、それだけっすか…?」
彼の手元にあるのは、近くのパン屋で売られているサンドイッチ一つ。
どう見ても一般的な成人男性の昼飯ではない。
「これで十分だ」
「え、もしかして毎日それだけっすか!?そんなんじゃ身体保たないですよ!あ…もしかして、お金がない、とか…?」
途端、ギロッと睨まれた。
「す、すみません…」
「……時間がないだけだ。買いに行った分、食べる時間がなくなる」
「あ、なるほど…」
(でもそれって、時間さえあればもっと食いたいってことだよな)
そう思いつつ、綺麗にサンドイッチを食べてゆく彼を見ていると、ふと俺の頭に一つのアイディアが思い浮かんだ。
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