小説
1
手には紙袋。
格好は作業服。
気分良く鼻歌を歌いながら、絨毯貼りの整然とした廊下を歩く。
――ガチャ
「こんにちはー」
扉を開けるとそこは女の園。
ビシッとスーツを着た綺麗なお姉様方が一人二人…計八人。
秘書ってこんなに必要なものかと初めは疑問だったけれど、どうやらこの会社は社長だけではなく重役一人一人に秘書が付く制度らしい。
「あ、純平くんいらっしゃい!」
「君が来たってことは、そろそろお昼休みね」
「んーやっぱ若い子っていいわぁ。癒されるー!」
次々とかかる声。
いい匂いのする年上の女性達に囲まれて、俺は若干緊張気味だ。
「あ、えっと、お疲れ様です…」
「やーん可愛いー!」
「なーに、まだ女と話すのは苦手なの?」
ここに通う内に、彼女達とは大分打ち解けた。
というか、気に入られた?
元々女の子と話すのがあまり得意ではないので、彼女達との会話はいつもしどろもどろだが、それが逆にお姉様方の母性本能とやらをくすぐったらしい。
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