小説
7
「今井!」
後ろから、声がかかる。
それは今まさに頭の中で考えていた人物のもので、反射的に立ち止まってしまった。
「はぁ…お前、歩くの速すぎ」
なんで、普通に話し掛けてくるんだ?
俺はお前の昨日の行為のせいで、こんなに悩んでいるというのに。
何故、急に付き合い始めた?
昨日のあれは、一体なんだったんだ。
「……お前のことが、理解できない」
「え…?」
「え、じゃないだろ!?なんで何もなかったような顔してんだ!なんで普通に話し掛けてくるんだよ!」
「いま…」
「頭の中がぐちゃぐちゃだ…っ」
「………」
「何とか言えよ…!」
沈黙が降りる。
遠くに聞こえる学生達の声が、やけに耳につく。
「………ちょっと、からかってみただけだよ」
「は…?」
「ほら、お前綺麗な顔してるしさ。濡れた髪が色っぽいなって前から思って――」
――パシンッ!
「…っ」
「最低だな、お前」
「………」
「見損なったよ。お前なんかをライバルだと思ってた自分が馬鹿みたいだ」
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