小説
6
「うっそマジで!?」
「マジマジ!今日の昼も一緒に飯食ってんの見たもん」
「うわー、まさかうちのミスがあいつに捕まっちまうとはなぁ」
着替えを終えて荷物を片付けているときに、部室に入ってきた二人の部員。
話に集中していたようだが、俺の姿を見つけると、すかさず寄ってきて口を開く。
「なぁ今井知ってたか?」
「…何を?」
勿体ぶった話し方が、なんだか気に障る。
ただでさえ今は、誰とも話したくないというのに。
「うちの大学のミス、昨日の夜からあいつと付き合いだしたんだってよ」
「あいつって誰だよ」
そんな話、俺には興味がない。
今は川田とのことで頭が一杯なんだ。
やっぱりあいつとちゃんと話すべきか――
「川田だよ川田!ったくあいつもやるよなー」
「……え?」
「あいつ顔だけはいいかんな」
「だよなぁ。性格は軽いけど、まぁそれは顔でカバーってことで」
「顔のいい奴は得だよなー」
部員達はまだ色々と話していたが、俺の耳にその声は全く届いていなかった。
何も言わずに部室を出て、ひたすら歩みを進める。
なんで俺は、こんなにイライラしているのだろう。
今までも川田に彼女がいたことはあったし、当然俺にだって過去何人か存在した。
それなのに、なんで…
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