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小説







その次の日、俺は講義には出ず、部活だけに参加した。
本当は部活にだって出る気分ではなかったが、大会前日であるためそうも言っていられない。



(ただ練習に没頭してればいいんだ…)



大会前は誰もが自分のことで一杯で、自分から話し掛けなければ誰とも会話をせずにすむ。
今は、誰とも話す気にはなれなかった。


あいつは、一体何がしたかったのだろう。
なんで俺にキスなんか…?
ふざけているようには見えなかった。


何より、あの悲しそうな表情。
一瞬しか見ていないが、後悔や焦り、他にも様々なものが複雑に入り乱れていたような気がする。
何も考えずに逃げてしまったけれど、きちんと話を聞くべきだったのかもしれない。


結局、考え事ばかりしていたせいで練習には身が入らず、タイムも普段より大分下がっていた。
明日実力が出せればいいんだとコーチに宥められながら、俺はプールから上がる。


川田の方は、一度も見ることが出来なかった。
だがあいつの視線は、確実に俺の背中に突き刺さっていた。





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