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小説




「和広くん…?」




急に焦りだした俺を不審に思ったのか、首を傾げて俺の顔を見つめる橘さん。


彼のお得意の仕草だ。


いつもそれは破壊力(もちろん理性の)抜群だが、今の俺にとってはもうミサイル、いや核兵器にも劣らないほどの攻撃だった。




「…っ」




今、彼の顔をまともに見てはいけない。


俺は両手を額に当てて前屈みになり、硬く目を瞑って視界を遮る。




「和広くん大丈夫…!?」




だが、やけに近い場所から彼の心配そうな声が聞こえて、俺はうっすらと目を開いた。


そこにあったのは、至近距離で俺を覗き込む彼の顔。


橘さんはソファーを降り、俺の足の間にしゃがみ込んでこちらを見上げていた。




(こ、この体勢は…っ)




まずい。


俺の息子と彼の顔が非常に近い。




「顔、赤いね…熱があるのかな」




――コツン




「――っ!」




額と額が触れ合った瞬間、俺の中の何かが崩れた。


気付いたときには、俺は柔らかいソファの上に橘さんを思いっきり押し倒していた。





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