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小説







「ごめんね。僕、ブラックじゃ飲めないから…」


「いえ!忘れていた俺が悪いんです!」


「折角美味しい豆だって言ってたし、ブラックで飲む方がいいんだろうと思ったらちょっと言い出しづらくて…」




申し訳なさそうにスプーンでコーヒーをかき混ぜる橘さんは凄く可愛い。


さっきはドキドキさせられちゃったけど、それもまた彼の魅力ってことで!


そんなことを考えている内にミルクと砂糖を溶かし終えた橘さんは、早くもマグカップに口を付けていた。


そして……




――コクン




(の、飲んだ…!)




「どう、ですか…?」


「うん、美味しい!」




そう言ってにこっと笑った彼に、俺はノックアウト。


思わず鼻に手を当て、血が出ていないかを確認する。


セ、セーフ…!


……駄目だ駄目だ。


これから俺はメロメロになった彼を慰めなきゃならないのに、俺がメロメロにされてどうする。


俺は早まる心臓の鼓動を抑えるために、自分の分のブラックコーヒーを一気に飲み干した。


折角美味しいはずのコーヒーも、この時ばかりはよく味が分からなかった。





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