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小説







「お、お待たせしました!」




俺は両手にコーヒーを持ってリビングへと戻った。




(お揃いのマグカップだから間違えないようにしないと…)




先程何度も確認した、アレが入った方のマグカップを彼の前へと置き、もう片方を自分の前に置く。


この後起きることを想像するとなんだか落ち着かなくて、俺はソファーに座ってからもずっとそわそわしてしまっていた。




「あの、和広くん……」


「は、はいっ!」




(バ、バレた…!?)




心臓が一気に飛び跳ねる。


だがこんな場面でも、二人でいるとき限定の下の名前で呼ばれて嬉しい気持ちは忘れない。




「あの、ね…?」


「な、なんでしょう…」


「凄く、言いにくいんだけど…」




――ゴクン




自分が唾を飲み込む音が、やけに大きく聞こえる。


だめだ、やっぱりバレたんだ。


ここはもう、正直に謝るしかない…!




「橘さ」


「ミルクとお砂糖、貰ってもいいかな…?」


「はへ…?」




その瞬間、自分でもびっくりするくらいの変な声が出ていた。





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