小説 6 「まさ、ゆき…?」 「……おはよう」 「まさゆ、き…っ!こわ、怖かった…っ!あいつ、走って、きて…おれ、踏みつぶす…っ!」 踏み潰すって…… こいつからしてみれば、ビッグはそこまででかいのか。 というか、俺もお前に抱き潰されそう。 ――ぽん、ぽん よしよし。 強まり続ける腕の力からなんとか抜け出して、ちびの頭を軽く撫でる。 涙をぐしぐしと拭っていたちびは、ふと自分の手を見つめて不思議そうな顔をした。 「あ、れ…?」 なんだ、今頃気付いたのか。 しばらくそのまま手を握ったり開いたりして首を傾げていたかと思うと、急に布団から起き上がって前回と同じあの隅っこに逃げ込んだ。 もちろん素裸で。 「あ…っ、まさ、ゆき…っ!お、れ、おれ…!きらいに、ならな、で…っ!」 「………服、着ろ」 とりあえずその姿は俺のプライドをチクチクと刺激する。 話をするのは、それからだ。 嫌いになんて、ならないから。 [前へ][次へ] [戻る] |