小説 4 「…ちび、どこ?」 「お、れ」 だから、お前は小さくはない。 「…犬の、ちび」 「おれ、ちび…」 お前が、ちび…… コイツがちびを逃がしたってことか? 「…ちび、どこ行った?」 「こ、こ」 ……会話が成り立たない。 部屋の中にはいないようだから、外に出て行ったに違いない。 俺は探しに行こうと、とりあえず上着を手に取って玄関へと向かおうとした。 ――ガシッ 「どこ、いくの…?」 歩きだした瞬間、なぜか男に腕を掴まれた。 離せよ。 俺はちびを探しに行くんだ。 「おさん、ぽ…?」 俺が目で訴えていると、男が急に目をキラキラさせてそう口にした。 だから、俺はちびを探しに… 「待って、て」 男はそう言ったかと思うと突然走りだし、玄関に置いてあったちびの散歩用のリードを持ってきて嬉しそうに俺に差し出した。 だから、その散歩をするちびがいないんだよ。 「はやく、行こっ!」 男がわくわくした様子で俺のリードを持つ手を掴み、自分の首輪へと触れさせた。 ……首輪? [前へ][次へ] [戻る] |