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小説







ある、雨の日。








「……犬」








俺は犬を拾った。









うちのボロアパートの前に置かれた、これまたボロい段ボール箱の中で、雨に打たれながら震えていた小さな犬。


多分、雑種。


特に目立った特徴はないけれど、その目だけは妙に色素の薄い不思議な色合いをしていて、とても印象的だった。




自分にネーミングセンスなんてものがないことを理解している俺は、素直にソイツに「ちび」と名付けた。


だって、小さいし。






ちびは、よく食べよく眠った。


なのにちっとも大きくならない。


まぁ、こんなに狭いうちのアパートで、あんまり大きくなられても困るんだけど。




寝るときは俺の布団で一緒に眠った。


ベッドなんて大層なもの、うちにはない。


壁が薄く、暖房器具はこたつしかない俺の部屋でも、ちびを抱き締めているととても暖かくてよく眠れた。




俺が大学に行くときは、ちびはきちんとおとなしく留守番する。


うん、いい子。


夕方部屋のドアを開けた瞬間に「おかえり!」とでも言うかのように飛び付いてくるちびは、俺の平凡な毎日にちょっとした潤いを与えてくれた。





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あきゅろす。
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