小説 4 「…はい。俺は、ここをたまたま通った、一般人です。」 彼女の迫力に押され、敬語な感じだ。 「あっそう。で、何。他になんか用があんの。」 わぁお。素晴らしい女王様ですね。あなたが聞いたんですよ。俺のことを。 あなたを助けたの、俺でーす。 「いや、あの。ケガしなかったのかなぁって。」 「ない。」 そうですか。そうですよね。あるわけないですよね。 …帰ろ。 人助けしたのに、何故か気分は絶望気味の俺は、回れ右をした。 「おい。お前。これ、お前のか。」 お前、お前ってお嬢さん。俺には、大山理っていう立派な名前があるんですよ。 回れ右をした俺に声をかけたその人は、俺の求人広告を手にしていた。 「あっ。そうです。俺のです。」 普通に忘れてた。さっきのことがショッキング過ぎて。 彼女が持っていた求人広告を受け取ろうとしたとき、いきなり手を捕まれた。 「な、なんですか!」 ちょっとビックリ。てか、ドキドキ。なんか、お礼とかされちゃうのかな。 次に出てくる、彼女の言葉を期待した。 「お前、仕事探してんのか。」 「は、はい。」 ふーん。と腕を組んで考え始めたその人は、悩んでる姿も美しい。 (だまってれば、可愛いのに。) ボーッとしながら、しばらく待っていると、美しい人が口を開いた。 「お前、お礼に俺の家で働かせてやるよ。」 ………はい? なんて言ったんですか。この人。常識はずれ過ぎてちょっと混乱した。 働かせてくれる? あれ?俺がこの人助けたんだよね?お礼ってされる側だよね?してあげるものなんだっけ。 僕、分かんなくなってきたよ。 [*前へ][次へ#] |