3.
章司という奴が麗さんを刺した。麗さんの仲間が、麗さんを殺そうとした。理由は喜一さんから、何にも聞いてないが、理由なんてものは、俺の中ではもう意味を示さなかった。
いったいどれだけ意地悪な神様に祈っただろうか。緊急手術室の扉が開き麗さんがストレッチャーに載せられて、何人かの看護婦さんと一緒に出てきた。
「「「麗!」」」
「「「お嬢!」」」
俺達が麗さんに駆け寄ると、その後に外科医の人も出てきて、もう大丈夫ですと告げた。喜一さん達は麗さんが無事だったことに安堵し、兄貴達は嬉し泣きをする。俺もよかった、と思わずもらい泣きをした
「ん゛ー。…親父?」
「麗!」
「「「お嬢!」」」
「ったく…心配かけやがって」
「フフッ。無事で何よりだよ」
その次の日の昼に麗さんが目を覚ました。
「麗さん…」
「…亮太…。彰…」
「「すいませんでしたっ!」」
「俺の不注意で、章司の奴…」
「俺たちのせいなんです!だから…」
「…なんだ…。夢じゃなかったのかよ…」
「「…麗さん」」
「…てめぇら、今日の所は帰れ」
「えっ!」
「でっでも!」
「…私の言うことが聞けねぇのかよ」
「「!」」
「…わっ分かりました」
そういって、寂しそうに帰ってく彰と亮太は、飼い主に捨てられた猫のようだった。そのあと黒井さんが、章司がどうなったのかという報告書を読み上げていく
[矢吹章司]:警察に現行犯逮捕され、今は刑務所。のちに今後彼をどうするかの裁判がある
「麗、裁判はどうする。参加するのか?」
「…」
「…麗」
「……し…かった」
「え?」
「…あのまま死ねばよかった」
「「「!!!」」」
病院にパンッと乾いた音がする。ベッドの方を見ると、麗さんは顔を横に向けていて、真喜男さんは手をパーにし上に上げたまま、静止していた
「…てめぇ、そんなこと死んでも言うんじゃねぇ!俺たちがどんだけ心配したと思ってんだ!!はぁーん!?」
「…んなん、知らねぇよ」
「なんだとー!!」
「アニキ!落ち着いて下せぇ!」
「アニキ!」
あのあと、俺達は真喜男さんを落ち着かせて、屋敷へと戻っていった。麗さんが退院した後、「お嬢が[鴉]を止めた」という情報が入り、麗さんの喧嘩癖は復活…いや…ささらに悪化した
そして、今麗さんは[氷帝学園]という金持ち学校に通っている。相変わらず喧嘩しているのか、毎日血だらけで帰ってくる。でも、俺はそれが少しづつ減ってきっていることに気がついた。
俺は昔、麗さんに「学校、楽しいですか?」と興味本位で聞いた事がある。でも、その時は舌打ちが返ってきて、悲しかった。でも…
「お嬢!」
「…あ゛?」
「学校、楽しいですか?」
今回はましな答えが返ってくるという期待が俺の中で募る
「…」
…あぁ…前と同じか…俺はそう諦めた
「…普通」
「へっ?」
俺の横を通り過ぎる麗さん。答えが返ってきた! しかも「普通」って!
「お嬢!!学校、楽しんでくださーい!!」
俺は興奮の余り、玄関の戸を開けようとする麗さんに叫んだ
「…うっせぇよ、和弥」
その一言が、俺の中での確信へと変わる
今回の学校は麗さんを変えてくれると
いつか、麗さんの笑顔が戻ってくるまで、俺は待ち続けます!
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