5.
お嬢達のおじいさん、喜一さんの父さんである[榊 義文さん]、通称[じじい]。伝統や決まりにこだわり、関東鋭牙会を一度壊滅状態にまで追い込んだ嫌な爺さんだ
「黒井、車を出せ…義文の家に向かう」
「はい、わかりました」
「親父、俺も行く。あのじじい…一発殴んねぇと気が済まねぇ!!」
「父さん、僕もいくよ」
「…やめて」
「「「っ!」」」
「おい麗!何言ってんだよ!」
「別に行ったって、どうにもなんねぇし…第一、気にしてねぇよ」
「っは!?」
「でも麗…前、入れ墨なんて一生したくないって…」
「考えが変わっただけだ」
「…麗、義文に何を吹き込まれた」
「何も吹き込れてねぇよ、親父。もういいだろ?学校に遅刻する」
「おい麗!ちょっと待ちなさい!」
「麗!」
「お嬢!」
そう言って門に向かう麗さんの背中には、以前のような[ワクワク]としたオーラはでてなくて、それは、全てを無くした時の[昔の俺]を見てるようだった
「おい、義文。麗に何をした」
「おー。誰かと思ったら喜一か。一体なんだ?そんな怖い面して」
「麗に何を吹き込んだんだ。答えろ」
威圧的な空気が流れる中、俺と黒井さんは2人の会話を見聞きしていた。ここは義文さんの屋敷で、壁には鬼や[伝統、貫くべし]と書いた掛け軸がいくつもある。その奇妙さに、正直俺は身震いをした。
「おー!あやつの入れ墨を見たのか!あれはわしの友人に頼んで貰ってなー…」
「質問に答えろ!」
「…別に吹き込むなんてしとらん。ちっとヤクザの[極意]を教えただけだ」
「極意だと…!?」
「お前にも昔、教えただろう。[近親者を信じるな、敵対心を持て]と。あの子お前と違って、話しを素直に受け止めてくれてなー!関東鋭牙会に値する立派人間になってくれるわい」
「…よくも余計なことを!」
「きっ喜一さん落ち着いて下さい!」
「喜一さん!」
あの時は自分のことや、周りの事で頭がいっぱいだったけど。今だから思えること、それは
麗さんの歯車のネジはもうすでに飛んでいて、手遅れだったということ
しかも、この悪夢は今後もさらに麗さんの心を侵略していくことになる。
だから、この出来事はほんの序の口に過ぎなかったんだ
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