黄蝶
15 side:なし
2日後、男はアリーナの観客席にいた。
平日だというのに席は埋まり、立って観戦する人もいる。
男は後ろの壁に寄りかかりながら、センターコートで試合前のアップをする少年を見ていた。
位置が悪かったのか、後ろ姿しか見えないが、背番号は4。
「きゃーーー///選手宣誓も格好良かったけど、バスケしてる姿もカッコイイ!!」
「近江せんぱーーーい!!」
「翡翠くーん!!」
女からの声援が非常に多い。
しばらく経つと試合が始まった。
そして男は少年の顔を見る。
観客席の一番後ろ、距離はあったがハッキリと顔が見えた。
正面から見たユニフォームには『SEIGAKU』と書いてある。
「青学の4番、中学から始めたようには見えないよな」
「なんかスポーツやってたんだろ」
「いやいや、ならなんでそのスポーツ続けないんだよ。ありゃ、運動神経抜群タイプだぜ」
「青学になかった、とか?」
「なら青学行かなくてよくね?あそこ私立なんだし。他の私立行きゃいいじゃん」
「確かにな」
「何か特別な理由があるなら別だけどさ」
「特別な理由?なにそれ」
「知らねぇよ」
男の隣で繰り広げられる会話。
高校生くらいだろうか。
「ま、一つ言えることは、近江翡翠。アイツは天才だ」
試合は翡翠の活躍により大差で勝利した。
試合終わり、コートから観客席を見上げ挨拶を終えた少年と、それを変わらず一番後ろから見ていた男の目が合った。
少年は目を見開き男は笑みを浮かべる。
「 」
男の口が動いたが、コートまで届くはずがない。
でも、少年にはわかったようである。
その目は恐怖と憎しみで揺れていた。
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