黄蝶
12
確かにリョーマ君は上手い。
それに、テニスを楽しんでる。
それがヒシヒシと伝わってくる。
フェンス越しに食い入るように見てると、後ろから肩を叩かれた。
振り返ると不二が怖い笑顔で俺を見ている。
・・・え?
俺、なんかした?
「テニス、したそうな目してるよ」
『不二・・・。気のせいだよ。竜磨、帰るよ』
そう白を切る。
自覚はしてるんだ。
でも、まだ認めるわけにはいかない。
竜磨に声をかけると、彼はまだ見ていたそうに不満の声をあげた。
『そっか。1 on 1やってもらおうと思ってたんだけど・・・。仕方ない、今日はシュート練習でもしてるよ』
そう言えば彼が否を言えないのはわかっている。
彼はバスケが好きだから。
「えーー、なら帰りまーす」
俺の手を取ろうとする不二からスッと逃れ歩き出すと、彼は案の定ついてきた。
ゴメンな、竜磨。
俺はお前の"好き"を利用した。
次に会った時のリョーマ君の反応を思い浮かべながら、彼にもゴメンと心の中で呟いた。
最後まで観れないことへと、この試合に勝っても試合をする気はないことへの謝罪を。
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