黄蝶
11
手塚が負けた。
それはテニス部員達を動揺させるには十分で。
2勝2敗1分の状態。
勝敗は補欠に託された。
青学の補欠はリョーマ君。
「翡翠先輩、俺がこの試合勝ったら、俺と試合してよね」
まだ諦めてなかったんだ。
俺は彼に笑顔を向け頑張るよう言った。
YesともNoとも答えることなく。
手塚の試合を見てもなお、手塚の腕が動かなくなるのを見てもなお、テニスをすることへの抵抗を拭うことはできなかった。
ボールを打つ音が
ボールが地面に落ちる音が
フェンスにぶつかる音が
ネットに引っかかる音が
全てが俺を誘うのに。
俺にテニスの魅力を伝えるのに。
俺は踏み出すことができないでいた。
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