黄蝶
5 side:奏斗
「そういう君は?」
「切原です。奏斗と同じ中学の2年っす」
「ふーん」
聞き返した割には特に興味がないようにふるまう彼。
昔からそうだ。
兄さん以外に興味なんてこれっぽっちもない。
彼の頭の中には兄さんしかないのだ。
「で、あんたは何?奏斗と翡翠さんと知り合いみたいだけど」
切原先輩の言葉に、僕は焦った。
兄さんの名前を出すのは、この人の前ではタブーだ。
ましてや見ず知らずの他人が。
周りの温度が2、3度下がった気がする。
「君は翡翠とどういう関係だ?君なら翡翠の居場所を知っていそうだな」
切原先輩の唾を飲む音が聞こえた。
早くこの人と離れた方がいい。
「切原先輩、もういいですから、行きましょ?後で説明しますから。副部長たちも待ってますし」
僕は郁兄を見ることなく、切原先輩を説得した。
不満そうにしていた先輩も、真田副部長の名前を出せばしぶしぶといった感じで郁兄に背を向ける。
「俺は三葉郁哉。翡翠と奏斗の兄だ」
最後にそれだけ告げ、郁兄は反対方向に去っていった。
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