黄蝶
2 side:奏斗
いよいよ関東大会。
兄さんがいないのはわかってるから、すごい楽しみってわけではないけど、それでも、兄さんみたいな強い人はいるんだと、胸踊らせていた。
でも、その反面、なんだかすごく嫌な予感もする。
妙な胸騒ぎ。
立海の試合は相手校の棄権で不戦勝になった。
それぞれのテニスコートで繰り広げられている試合を横目に見る。
僕もいつかあそこに立ちたいな。
そして、できることなら、兄さんと戦いたい。
あれ・・・?
でも、なんか僕忘れてない?
何か、とても大切なこと。
考えれば考えるほど頭が痛くなってきた。
「奏斗?どーした?」
まだ行われているらしい青学vs氷帝の試合を見に行くらしい先輩たちについて歩いていた僕が足を止めると、僕の前にいた切原先輩がそれに気づいた。
「いえ、なん「奏斗?」」
心配させてはいけないと思い、大丈夫だと伝えようとすれば、後ろからかけられた声でそれは遮られた。
「やっぱり・・・。何、お前まだテニスしてんの?」
振り向けばそこには知らない人。
知らない・・・?
いや、知ってる。
僕はこの冷たい声を知ってる。
でも、思い出せない。
「あの・・・、誰ですか?」
失礼だとは思い出つつ、相手の目を見て尋ねる。
「何、覚えてないわけ?薄情な弟だな、まったく」
そう笑う彼の目は全然笑ってはいなかった。
え?
弟?
僕が?
この人の?
そんなわけない。
だって僕の兄さんは・・・
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