黄蝶
15 side:越前
仮入部期間が終わる頃、いつもと違い体育館に集合するよう言われて来たが、主旨が全くわからない。
部長や先輩に着いて体育館に足を運べば、そこにはすでに人がいて。
ある人の顔を見つけ、それが何の団体なのか理解する。
バスケ部だ。
どうやら、バスケ部と合同で何かをするらしい。
話を聞く限り、スポーツテストのようなものらしいが、少し違う。
反復横跳びなんか、まるでスクワットだ。
でもまぁ、慣れればどうってことない。
ヒイヒイ言っている他の1年やテニス部の一部の先輩に、心のなかで“まだまだだね”と呟きにながら、2回のテストを終える。
次の組で出てきた彼、図書委員会の委員長で、バスケ部の部長、近江翡翠を横目で見ながら、ペアの桃先輩の数を数える。
周りがざわめき、そちらに意識を集中させると、彼が物凄い速さで反復横跳びをしていた。
「へー、やるじゃん」
誰にも聞こえないようにそう呟き、うっすらと顔に笑顔を浮かべる。
あの人と張り合って見たくなった。
「桃先輩、次から順番変わってください」
「はぁ?いいぜ、別に」
俺の突然の発言にハテナを浮かべながらも了承してくれるあたり、本当にいい先輩だと思う。
悔しいから、口には決して出さないが。
「ふん、まだまだだね」
先輩の記録を書き彼に渡しながら言うのは嫌み。
この後、俺らの言い合いは手塚部長からの鉄槌で幕を閉じる。
ただの照れ隠しだったのだが・・・。
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