黄蝶
11
案の定、昼食を食べ終わった頃から図書室は混み始めた。
うるさい訳ではないから気にしてはいないが、よくみんな昼に図書室に来るなぁ、と思う。
俺なら来ない。
本を読むのだってただの暇潰しだ。
興味がある訳ではない。
(((近江様カッコいいーー)))
[図書室に来ているほとんどの女子が翡翠目当てだということを本人は知らない]
「こ、これ、お願いします///」
女の子がカウンターに来て声をかけてきたため、俺は顔を向ける。
ほんのりと赤くなった頬。
ちょっとここ暑いかな?
なんて部屋の温度の心配をしていると、隣から手が伸ばされ、越前君が貸出の手続きを始める。
出来た子だな。
そう思いながら、俺は返却に来た子の手続きを行っていった。
予鈴と共に俺たちの仕事は終わり、あとは司書さんに任せて教室へと戻る。
越前君とも分かれ、教室に入った俺に菊丸が飛び付いてきたのは言わずも知れてる。
「翡翠ーー!委員会なら言ってよー!知ってたら図書室行ったのに!!」
『菊丸来るとうるさいからダメ』
「俺静かにするし!!」
『不二と来るならいいよ。静かにしてそうだし』
「えーーー」
「僕ならいいよ。翡翠とペアになったこも気になるし」
『あれ、言わなかった?テニス部の1年だよ』
「へーーー」
(ふ、不二なんか怖いにゃ)
(いつもだけどもーーー)
菊丸の心の声は不二に届くことはなかった。
まぁ、届いたらヤバイ気もするが。
越前君、大丈夫だよね・・・
うん。
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