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黄蝶
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『とりあえず、昼の仕事はこれだけ』

簡単でしょ、と付け加え告げれば、彼はそっけなく返事をした。

読んでいた本を貸してしまったため、また暇になる。

『越前君、テニス部なんだよね』

「そうっす」

隣の彼も暇そうだったので話しかけてみる。

といっても話題がなかったため部活の話をするしかなかった。

そっけない返事に、無愛想だなぁ、とも思うが、嫌いではない。

『テニス、楽しい?』

「当たり前」

俺は何を聞いているんだろう。

自分で聞いて後悔している。

「先輩は・・・、バスケ楽しいの?」

『・・・、楽しいよ』

彼からされた質問は、俺がしたのと同じもの。

確かに最初は楽しさを感じてる余裕なんてなかった。

でも、次第に楽しくなってきたのは事実。

今の俺はバスケを楽しんでいる。

それに嘘偽りはない。

「ふーん」

自分から聞いたのにそっけない彼の返事に、俺はつい笑ってしまった。

面白い子だ。

本当、嫌いじゃない。

生意気なところが弟みたいで。

確かアイツも今年入学したはずだ。

元気でやっているだろうか。

驚きの表情を見せる越前君の存在を無視し、俺は物思いにふけるのだった。

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