黄蝶
9
金曜日の昼休み、一緒に食べようとくっついてくる菊丸をなんとか撒き、不二に委員会に行くとだけ伝え図書室へと向かう。
3年の教室の方が近いからか、越前君はまだ来ていなかった。
適当に小説を探し、カウンターに入って読み始める。
貸出や返却の生徒が来るまで暇なのだ。
静かな図書室に、ガラッという音をたてて入ってきたのは、越前君。
「何やってんすか」
一瞬彼に目を向け、本に視線を戻すと突っ込まれた。
『生徒来るまで暇だからね』
「ふーん」
彼が隣に座ったとき、またもドアが大きな音をたてて勢いよく開いた。
「翡翠君、本返しに来たんだけど・・・」
真っ先に俺に声をかけてきた女の子はもう何回も本を借りていってる子だ。
俺は本に栞を挟み、越前君を見た。
「どーすればいいんすか」
最初だからわかるはずないか、と教えながらやっていく。
頭がいいようで、すぐにのみこんでくれるからこちらとしても楽だ。
「翡翠君、何読んでるの?それおもしろい?」
『あぁ。借りてく?』
「え、いいの?翡翠君が読み終わってからでいいよ」
『うん、彼に貸出の仕方も教えたいし』
そう言えば、彼女は、じゃぁ、と本を借りてくれた。
お礼を言い、越前君に貸し方の説明をした。
この暇な時間帯に教えることができてよかった。
みんながご飯を食べ終わるころから生徒が増えてくるから、大変になるんだよね。
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