橙蝶 19 side:翼 「何言ってんの、お前」 青海光星の話を聞き、わけわかんないんだけど、と続ければ、彼は俺を嘲笑うかのように鼻で笑った。 「だから、何も知らない君は呑気でいいなって言ってるんだよ」 「俺は那智が裏で何をやらされてるのか知ってる!」 穏やかな彼に対して、俺は怒りを抑えられずにいた。 俺は全て知ってる、はずだ。 あの時要に聞いたことが真実だというのは、その後の校長やペルソナの言動でわかった。 何も知らないのはむしろ青海の方ではないのか。 「悪いけど、僕は那智の全てを知ってるよ。もちろん過去もね」 俺の心を読んだかのように告げられた言葉。 それほど俺は取り乱しているのか、と一度冷静になり落ち着こうとする。 「それが得策だね。今の君は分かりやすすぎる」 俺の怒りを煽って来た彼。 「頭の悪い君に、分かりやすいように教えてあげるよ」 向き合っていた状態から、俺に背を向け彼は言葉を続けた。 「君が話しかければ話しかけるほど、那智は苦しむ。後で泣きそうな顔をする。僕はそれを見たくない」 分かりやすく教えると言っておきながら、その話は滅茶苦茶で。 俺は更に理解に苦しむ。 [*前へ][次へ#] [戻る] |