橙蝶 3 [そのまま〇〇港の倉庫に向かって!] 『は?』 丁度仕事が終わる頃、持たされている携帯電話が着信を伝えた。 相手はそれを持たせた人間ではなかったが。 焦った声で指示を出すのは、初等部Bの担任。 [棗くんと蜜柑ちゃん、棗くんのパートナーの子がそこにいるんだ。毛利玲生・・・Zの一員と一緒に] 「そんな勝手なことは認められない」 耳にこの携帯の受話機能を取り付けたイヤホンを入れていた彼、青海 光星が俺の手から携帯電話を取り上げ、そう告げた。 彼は俺の監視役だ。 初等部校長命の融通の効かない奴。 俺はそう認識している。 制御のアリスなため、仕事以外で俺のアリスは彼によって完全に制御、管理されているのだ。 不愉快きわまりない。 [今から我々も向かう。でも、君たちからの方が断然近いんだ] 「我々が動くのは校長の指示のもとです。貴方に従う理由がない」 『青海、俺は行く』 「那智!?行って何になる!」 本当に融通の効かない彼に痺れを切らし、俺は走り出す。 いや、走り出そうとした。 しかし、片手を彼の携帯を持たない方の手で掴まれ、それは阻止された。 『棗を失うことは校長にとってもマイナスだろ』 「・・・」 『それに、俺は逃げたりしない。必ず帰るから』 尤もなことを並べれば、彼は仕方ないと言うように俺の手を離した。 「僕は一切手を貸さない。帰ったらお仕置きだよ・・・、那智」 最後の言葉に少々の寒気を感じながら、俺は青海と共に言われた倉庫に急いだ。 [*前へ][次へ#] [戻る] |