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その出来事の次の日だった。



「三橋、ちょっと話あんだけど。」



阿部君が、オレの部屋に入ってきた。
オレは、座布団を敷いて迎え入れた。



「昨日はゴメン。」



開口一番にそう言われて、すぐにあのコトだってわかった。
あれからオレ達の間には気まずい空気が漂ってたから、あのコトを言われるだろうとは思っていたけど。



「お前、今大変なのに責めるような事言っちまったし…」



「だ、ダイジョーブ、だよっ。」



「本当にワリィ…」



阿部君の方が衰弱しているようだった。
それもそうだ、恋人に別れ話されてて、いきなり消えられて傷ついてる時に、ルームメイトが記憶喪失。
オレなんかよりも、阿部君の方が大変なのかもしれない。



「阿部君のコト、話して、ほしい。」



「え?」



「オレ、阿部君の2年間も、知らない。
だから、教えてほしい。」



感情を吐き出すのは、キモチイイ。
阿部君が苦しんでいる理由を口に出せば、少しは楽になるんじゃないかと思った。



「……、でも、」



「オレが聞きたいんだ。」



そう阿部君を見つめて言うと、阿部君は目をそらした。



「……、お前は、オレが恋色沙汰で苦しんでんの意外かと思うけど、実は高校生の時から悩んでたんだよ。」



「…!!」



オレの知ってる、18歳の阿部君も、20歳の阿部君と同じように悩んでたのか。
全然、気付けなかった。



「背徳的な恋だったからさ、本当は好きになっちゃいけない相手だったんだよ。
んで、諦めようとしても出来ないくらい、自分で信じられねーくらいソイツが好きでさ。」



阿部君の表情が苦しそうで、でも愛おしそうに歪められている。
オレは、口を挟めなかった。
好きな人の、好きな人。
そんな話を自分から教えてほしいと言う日がくるとは思ってなかった。
オレは、ばかだ。
もう、こんなにも、泣きそうだ。



「毎日毎日、会うたびに好きになって、もうどうしようも無いところまで来てて、」



誰?誰なんだ、その人は。
スキニナッチャイケナイヒト。
教師、もしかして結婚してる人、モモカン?
わからないその人に、嫉妬する。



「だからオレが悪かったんだ。
アイツを手に入れる為に、出口を無くして、ずっと一緒にいれるように策略張らして、逃げられなくして、」



「…、ぁべ、く、」



「そんぐらい、欲しかった…!」



阿部君が手の平で顔を覆う。
泣いているみたいだ。
オレには、何も出来ない。
阿部君の、元カノじゃないと、ダメなんだ。



それでも、



「阿部、君。」



「…?」



「阿部君が、その人のコト、スキ、なのわかる、よ。
でも、それでも、悲しんでるのも、わかる。
だから、オレが、傍にいるから、安心して、ほしい。」



オレはいつも伝えたい言葉がわからない。
阿部君に元気になってほしいだけ。
ただ、悲しまないで、オレは傍にいるよって伝えたいだけ。
消えた彼女とオレの関係。
阿部君が隠している過去。
忘れてほしくなった出来事。
まだ、問題はたくさんあるけど。



(阿部君との、2年間の記憶を思い出さないと…!)


[*返球][送球#]

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