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何故かオレはそれから病院に行って、何かよくわからないけど沢山の検査をうけた。
自分を「阿部隆也」だと名乗る、どう見たってオレの知っている阿部君より大人の容姿をした男の人が階段にいたオレを迎えに着て、病院に引っ張られるように連れて行かれたからだ。



診察室で、医師はオレに質問をした。



「あなたのお名前は?」



「三橋、廉です。」



「お住まいは?」



「埼玉県、さいたま市、」



「年齢は?」



「ジューハチ、です。」



その言葉を発した途端、医師も看護士も付き添いの為に傍にいた阿部君(らしき人?)も固まって、一気に診察室の空気の温度が冷えたのがわかった。

それからいくつかの質問をされて、心療内科の方も何故か行って、結果医師の下した診断は、簡単に言うと(オレの理解できた範囲では)限定的記憶喪失、というものらしかった。
と言っても、“かもしれない”とのことなので、1、2日入院することになった。
オレが雰囲気から察するに、18歳のころより時がたっているんだろう。
阿部君を見るに、大学生にはなっていると思う。
オレは今、何歳なんだ?
何をしているんだ?
思考が巡りそうになった時、看護士さんに、こちらの部屋です。と通された。
病室は207号室。



とりあえずベッドに荷物を置くと、今までずっと深刻な顔をして黙っていた阿部君…年上みたいだから阿部さん?が口を開いた。



「鏡、見てみろよ。」



「?、はい…?」



そう言われて洗面台にある鏡に自分の姿を映す。
そこには、



「…!」



「この鏡に映ってんのが、20歳の三橋廉。」



「これが、20歳の、オレ…」



ペタリと手を鏡につけると、向こうのオレも手を合わせてきた。
オレの記憶は、2年間の出来事がごっそり抜け落ちているということか。
オレのすぐ思い出せる記憶は、先日野球部を引退したことだ。
それから、2年もたっているなんて。



「あべく、あ、ちが、阿部さん、あの、」



「なんだよ、つか、さん付けとかヤメロ。」



「でも、オレより2歳も年上だ。」



「お前も同学年だっつーの。」



そう言われても、オレの中身は18歳を現在進行形で生きている。
いくら年齢と外見が20歳でも、意識しないのはムリだ。
20歳っていったら、もう成人している大人なんだし。



「だいたい、2年たってもそう精神年齢なんて変わんねーぞ。
それにお前によそよそしくされんのはイヤなんだよ。」



そう言われて、無理やり納得させられた。

時計を見ると、時刻は13時を少し過ぎていて、だけどお腹はちっともすいてなかった。



「疲れたか?」



オレは首を振った。



「眠いか?」



また首を振った。



「何したい?」



「話…今までの、話、したい。」



そう願うと、阿部君は少し躊躇った。



「…オレも、2年も前のことを細かに覚えてるわけじゃねーよ。」



「それでも、知りたい。」



阿部君は観念した、というように深いため息を吐いた。



「……高校卒業して、オレらは違う大学行ってるけど、ルームシェアしてる。」



そんだけ、他に訊きたいことある?と尋ねられて、何も思いつかなかった。
そっか、違う大学なのか、一緒に住んでるんだ、だから今、付き添ってくれてるんだって、「そうなんだ」っていう気持ちがストンと胸に落ちた。



だけど阿部君が何かオレに教えたくない過去を持ってることは明らかだった。


[*返球][送球#]

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あきゅろす。
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