[携帯モード] [URL送信]
【春風】

芽吹いたばかりの若葉達が
小気味良く奏でる
アンビエントに合わせ
私は小さな嗚咽を漏らす

まだ冷たい春風が涙を拭い
火照った頬を撫でていく

新しい季節の中に
キミだけがいない
隣で春を待っていた
キミはもういない

振り返ると遥か彼方で
キミは微笑みを浮かべ
大きく手を振っている

私は後ろ向きのままで
小さくなるキミの姿を
見つめるしか出来ない

ふたりの間に吹く風は
冬の終わりを告げる使者
無慈悲にキミから体温を
奪っては去るばかりのみ

どうかその温もりを
私達に返してくれないか

どうかふたりのこの距離を
再び戻してくれないか

冷たい風は速度を増しながら
私を一瞥して新たな春を運ぶ

私は立ち尽くしたまま
キミの居たあの場所を
目を細めて眺め続ける

隣には誰もいない





[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!