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オリキャラ小説置き場(設定も有)
Twilight
日没後の微かな明るさに包まれた夕方。庭や、玄関先の光が目立つ時間帯だ。
仕事帰りの会社員や学生が、我が家へと急ぎ足で向かう光景が見えるベランダ。

綺麗に掃除されているベランダには、俗に言うメイド服姿の女性が居た。
手に缶入りのココアを持ち、柵の淵に肘を乗せて白い息を吐いている。

「…暇ですねぇ……ネタもないし…」
ポツリと一言もらし、はぁとため息をついた。



いつも作ってもらってるから、と自分より一つ年下の少年に気遣われ、今日は少年に譲ることになった。
好きでやってるんだけどな…と思いつつも言葉に甘え、任せた。

鼻歌を歌いながらしばらくぼーっとしていると、ふと笑い声が聞こえたような気がし、辺りを見回す。
「あはは、やっと気づいた?」

隣には見慣れた白衣姿の青年がいた。
元からそんな雰囲気を出しているが、微かな明かりに照らされた姿はいつもより色っぽい。



「い、いつから居たんですかぁ!?」
本気で驚き、少し身をのけぞらせながら言う。

「ふふ、三分前。」
にこにこしながら答えるが、こちらにとっては死活問題なのだ。

(影みたい→私が気づかない→部屋に入ってきたら…→腐本が…ッ!!)
どうしようどうしようッ…鍵かけるかな…と思いつつ、へぇ〜…と相槌を打つ。



そのあとは話も何も無く、暇で暇で仕方が無いので脳内で腐ネタを練っていた。
ちらっと見てみると、クールダウンしに来たようで、柵に寄りかかっている。

「…どうして、人体実験なんて…やってるんですか…?」
前々から気になっていたことを口にする。



「…うーん…自分のため?かな?」





誰かの、大切な人をたくさん奪って。
たった二人のために、その白い手を赤黒く染めるの?





なんとも言いがたい怒りと悲しみが湧き上がってきて、青年の首元を掴む。
年上だということも、自分が雇われの身で、相手が雇い主だということも、青年の名前も、全て忘れて。

「そんな、曖昧な理由でッ、誰かの大事な人を殺めてきたんですか!?…ッざけないでください!!」
普段出さない大声で思い切り怒鳴りつけ、噛み付けるほど近くに引き寄せた。

それでもまだ先程の笑顔を崩さない青年に、さっきとはまた違う怒りが湧いてくる。
どうしてどうしてどうして…ッ!…それしか思い浮かばないほど、強く。



「なんでたかが二人のために、沢山の人の命を奪わなきゃいけないんですか!!悲しいのは分かりますっ…でも、それとこれとは違うと思うんですッッ!!」
そう叫ぶと、青年は笑顔を驚いた顔に変えた。

「…っ、すいません。荒ぶりました…」
胸倉を掴んだ手を放さずに謝ると、青年はニィっと笑った。

「…僕の名前、覚えてる?」
そりゃあもちろん・・・と言いかける。

「…えっと…刃…」
ああ、そういうことか。よーく分かった。

手を離し、複雑な気持ちと表情で刃を見つめる。
もう夕暮れから夜になっていて、月と星が輝いている。

「分かったらいいの。分かったら。」
と言うと、またニィと笑う。まるでチェシャ猫のように。

その笑った顔は逆光で黒くなり、見えなかったが、チェシャ猫よろしく笑った口だけはよく見えた。



「っふふ、意外と面白かったよ」




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あきゅろす。
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