[携帯モード] [URL送信]

夢幻未来


うんうん、と感慨深げに頷く近藤に土方は呆れ顔を作った。

何を考えているかと思ったらそんな事か。

「そんなんじゃねぇよ。昨日話しただろ、コイツが俺の恩人だ」

「え、あの木刀で銃弾を打ち返したのがこんなお嬢さんなの!?俺てっきりもっとムチムチ系の女の人だと思ってたよ!」

「…近藤さん、それは凛花に失礼だ」

更に呆れ顔の土方だったが、話の流れを黙った見ていた凛花は緩く首を横に振った。


「私は気にしてませんから。それより動物園の飼育員さんへの連絡はまだなんですか、ゴリラが真選組に逃げ込んだって言わなきゃ」

「めちゃくちゃ気にしてんじゃねぇかァァァアア!!」


相変わらず口元しか見えないがそれはどうみても笑っていなくて、近藤は顔を引きつらせる。

「土方さん知ってますか、脱走したゴリラは凶暴だから殺してもいいそうです」

「嘘ォォオ!!?俺初耳なんだけど!ていうかゴリラって俺の事!!?」

「当然ですね、今ゴリさんのために作りましたから」

そう言って布で包まれた木刀から布を落とし、それを近藤に向けた。

「え、ちょ、タンマ!」

「微妙に古いですね」

冷や汗をだらだらと流す近藤。


これには流石の土方も焦った。

「待てェェエ!落ち着け凛花!!そのゴリラ一応真選組の局長だから!!」

「ねぇトシ、ゴリラって所は否定してくんないの?」

「……しょうがないなぁ、必死な土方さんに免じて許してあげます」

「あれ、無視?無視なの?」

「悪ぃな、凛花」

「おかしいな、目の前がかすんで見えないぞ」

若干涙目の近藤を無視して木刀をしまう凛花。

それにホッとして一息ついた土方だったが――




ドカアァァン!




「ぬおぉぉぉ!?」

「あら」

「!」


――次の瞬間、彼めがけてバズーカが飛んできた。


一応二人ともそれをしっかりと避ける。


(トシの恩人…、なかなかのやり手だなぁ)

必死の形相でスレスレの所を避ける土方とは逆に、巨大な爆音にも臆せずスッと一歩下がって避けた凛花を見て近藤は素直に賞賛する。

殺気も何も無い所から飛んできたバズーカ(ちなみに犯人は分かっている)を避けた上、昨日は銃弾を打ち返したという。

最初彼女を見た時は半信半疑だったが、やはり強い。


「土方さん、大丈夫ですか?」

「俺は平気だ」

そっちこそ大丈夫か?と聞く土方に彼女は小さく笑って頷く。



……とその時、バズーカが放たれた方向から人影が現れた。

「あーあ、何避けてやがんでィ土方コノヤロー」

「総悟ォォオオ!!テメェ、殺す気か!!」


(……っ!!)


スッと廊下から現れたその姿に、凛花はぴくっと肩を震わせた。

だがそれには誰も気付かない。


「安心してくだせェ、土方さんのお墓には毎日犬の糞を供えておきまさァ」

「嫌がらせ以外の何物でもねぇよ!!安心どころか不安だわ!」

「まぁまぁトシ、落ち着け。ほら、凛花さんがビックリして何も言えずにいるじゃないか」

そこで初めて沖田の視線が凛花に向いた。

笠越しに見える自分と同じ顔に凛花は平常心を保とうとするが、いつもの様に周りを気にする余裕が無い。

こんな所で会うのは予想外だった。


「…?おい凛花、本当に大丈夫か?」

「ぁ……」


気が付くと目の前には怪訝そうな顔をしている土方。

凛花は半ば無理矢理に口角を上げると、「平気ですよ」と応えた。

それでも土方は更に眉根を寄せたが、少し離れた所にいるからか近藤は特に何も思わなかったらしい。

「ガハハハ、うるさい所ですまんなぁ!」

「え?いえ、そんな事…」

慌てて首を横に振る凛花だったが、そんな彼女の傍に沖田が一歩近づく。

その時凛花が体を強張らせた気がして、土方は僅かに首をかしげた。


……が、


「アンタ、どこの誰かは知りやせんが遠慮しなくていいんですぜ。うるさいのは全部土方のせいだって文句言っていいんですからねィ」

「お前のせいだわァアア!!バズーカぶっ放したのはどこの誰だ!」

「さァ?土方コノヤローじゃねぇんですかィ?」

「お前後で切腹な」


飄々としている沖田にその疑問はかき消された。



そしてそのまま言い合う二人だったが、ふと凛花が零した言葉でそちらに意識を向けた。

「…仲が良いんですね」

「は?どこからどう見たらそうなるんだよ」

「そうでさァ。こんな奴と仲良しこよしするぐらいなら便器に顔を突っ込んだ方がマシでィ」

「なんだと?俺なんてアレだ、そんな事するぐらいなら崖から飛び降りて死んだ方がマシだ」

「じゃあ死んでくだせェ」



ジャコン



「バズーカ向けてんじゃねェェエ!!」

「チッ」

「テメェマジで後で切腹だからな」

舌打ちしながらバズーカを下ろす沖田に額に土方は青筋をたてる。

「……ふふふっ」

それを見て思わず凛花は笑った。


(……懐かしい)


――似てる、あの頃と。


銀時と彼もよく喧嘩をしていた。

だけどその奥には揺るがない信頼関係があって、だから凛花は銀時達の言い合いは嫌いじゃなくて。

……あの二人の言い合いも今はもう、見る事は叶わないのかもしれないけれど。

[*前へ][次へ#]

3/5ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!