夢幻未来
four
「なっ・・・!?」
「サドと同じ顔アル!!」
驚く二人。
(・・・サド?)
だがその反応は予想通りだった上にそれ以上に気になる単語が出た為、凛花はその事については特に触れなかった。
「・・・ねぇ銀時、サドって・・・」
「おー、間違いなくお前の兄貴の事だな。凛花と同じで腹ん中真っ黒・・・え、ちょ、凛花ちゃん冗談・・・ぎゃあぁああ!!」
ゴンッッ!
失礼な事を言おうとした銀時の頭を、反動をつけて思い切り目の前の机にぶつけ黙らせる。
それを見て黙り込んだ新八と神楽を横目に、凛花はため息をついた。
認めたくはないが片割れである存在は、まさかのサディストなのか。
今まで関わりは無かったしこれからも関わるつもりは無いが、それでもいい気分では無い。
「あの、凛花さん・・・、机になんか真っ赤な物が広がって行ってるのは気のせいでしょうか」
「うん?・・・あれ、どうしたの銀時。なんか頭から真っ赤なの出てるよ」
「いやいやいや!!やったのアンタでしょ!?」
首をかしげる凛花に全力で新八はつっこんだ。
「私は何もしてませんよー」
「嘘つけエェ!!棒読みだわ!!」
「大丈夫アルよ新八ー。銀ちゃん体だけは頑丈ネ」
「そうそう、神楽ちゃんの言う通り。だって体が丈夫な事だけが銀時の唯一のとりえだもの」
「そうアル。後はただのマダオと何も変わらないヨ」
「どうせ銀時の事だもの。パチンコで金を使い果たしてツケで食事、食い逃げの常習犯な上に家賃も給料も誤魔化して払わない。更には仕事もしないでジャンプばっかり読んで、日がな苺牛乳を飲んで暮らしてるんでしょ」
「凄い凛花さん、全部当たってます」
顔を引きつらせてそう言う新八に凛花は微笑んだ。
「銀時は昔からそんな感じだったから。見てなくても大体分かるわ」
そして吹き出し、笑い出す三人。
いつの間にか、あの重いしんみりとした空気は消えていた。
――そして、その一方で。
「おいてめーら、好き勝手言ってんじゃねーよ」
意識を取り戻した銀時は、頭を伏せたままそう呟いた。
頭がじんじんする。
どうやら我らが凛花様々は手加減をしてくれなかったらしい。
・・・最も、あのサディスティック星の王子の妹にそんな慈悲を求める事自体間違っているのだが。
「チクショー、しばらく見ないうちに兄貴に似てきたんじゃねぇか」
なんでだ。
高杉ならともかく、辰馬と一緒に旅してた筈なのに。
銀時がそう思って遠い目をした時だった。
「え」
真っ赤だった視界がクリアになり。
そして、
「ギャアアアァァ!!?」
笑顔の凛花に何かをぶっかけられたと思った瞬間、頭にさっき以上の痛みが走り銀時は床をゴロゴロとのたうち回った。
「ちょ、何コレめっちゃ痛いいい!!!」
「何って・・・、消毒液に決まってるでしょ?このまま机汚されても困るし、手当てしてあげたの」
手にマキロンを持ってそう言う凛花の表情は、素晴らしく笑顔だった。
「・・・やっぱり凛花さん、沖田さんの妹さんなんだね」
目の前で繰り広げられる攻防戦を景色のひとつとして目に映しながら、新八は誰にともなくそう言った。
「間違いないアル、あのサディスト具合は兄貴そっくりネ。だけど私は凛花のが百倍好きヨ」
「何言ってんの凛花!?それ手当てじゃなくて余計に負傷させてるだけだからね!?」
「そっちこそ何言ってるの銀時ー。ほら、痛くないから大人しくして・・・おおっと!」
「っぐあぁああ!!目、目があぁああああ!!!」
「えへ。ごめんねぇ、手がすべってかける所間違えちゃった」
「嘘付けえぇぇ!絶対わざとだろテメー!!え、何?銀さん何か悪い事しましたか!?」
銀時に馬乗りになって手当てという名のイジメをする凛花を見つめて、神楽はぽそりと呟いた。
「帰って来た時に迎えてくれた凛花を見て、私マミーを思い出したヨ」
いつもより賑やかな万事屋の午後。
新八は小さく笑いながら誰へともなく言った。
「このまま凛花さんが万事屋に居てくれたらいいね」
(例え過去がどんな物であろうとも)(あなたはもう万事屋にとって大切な人なんだ)
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