[携帯モード] [URL送信]

コラボ小説
狂人な恩人と裏切り




今回のターゲットである組を潰しながらあいつ、神坂 譲の声を聞いていた。


大分近い距離で呟いていたのか、まるで耳元で呟かれたような声は俺に自殺宣言の様な内容を告げる。

「ホントに、刑事に向いてないな。それに、そんなことさせねぇからな?」

伝わるわけでもないが、何となく指輪にそう返した。

ホントに、譲は変わった刑事だと思う。

犯人だってわかってんのに逃がすようなこと言ってやがるし。

正直な所。別に顔が割れても問題は無かった。

表に捕まれば、極刑は免れないことも知っているけど、捕まる気もなければ死ぬ気もない。

もし、仮に捕まっても雇い主は俺が契約を裏切らない限り俺を切ることはないし、こんなことは譲と会うまえだったらいつものことだ。

それに法は守ってるしな。
もちろん、表の法ではないが………。


そもそも、俺は無闇に掃除をしている訳じゃない。


フリーではあるが昔やっていた窃盗以外は全てが依頼だ。

勿論仕事を受ける相手は選んでるが。
それが偶然なのか何なのか、それこそ法で裁けない上に法の抜け目を潜り抜けた裏の人間だけがターゲットになった。


殺り方がある程度派手でえげつないのも実はリクエストだったりする。

別に好きでやってる訳じゃない。
派手に殺るのはターゲットだけで、他の部下等の雑魚は大抵気絶させている。

仕事だからだ。
そもそも、こんなことが楽しいと思う様な奴よりは俺は異常者じゃない。

なんて、誰に言い訳しているのか分からないことを思案しながら動いていると、譲の声が途切れた。

思わず一瞬動きが止まるが、この場にいた組の構成員はもう地に沈めきっていた。


譲はどうやら、薬で気絶させられたようだ。

呻き声がしたあと、完全に譲の声がしなくなった。


しばらくすると、別の声が聞こえた。


『なんか独り言呟いてたけど、何だろ?』

『放っておけ、もしかしたら奴を召喚する餌になるだろうしな』

『清柳さんも悪どいね?』

『ハッ、ヤクザ者が悪どくなかったらどいつが悪どくなんだ?………にしても面倒なシマだがな。』

『だったら断ればよかったのに』

『しゃーねぇだろ?晴臣からの依頼だし、これはビジネスだ。』

『全く組長は柳さん贔屓なんだからもう!』

柳さん………ああ、あいつか。
この前あいつと一緒に居たとき物凄く睨んできた………。


それに、清柳組はまだ表に近い極道家だったはず。

何故依頼だからといってこんなことを?



「へぇー!随分派手にやってくれてんじゃん?」

そう軽い口調で出てきたのは、ターゲットの情報に上がっていた容姿の奴だった。

ちっ、今日の殺害対象がやっときやがった。


が、思わず俺は譲といるとき以外は崩したことがないポーカーフェイスが崩れるのを感じた。


「何で、………何で、あんたがここにいんだよ………。」



「え?何でも何も元から俺はここの人間だよ?」

服装と容姿の雰囲気のみの情報しか与えられなかったターゲットは、譲と会う前に同居していた奴だった。


「でも、まさかお前に殺しにこられるとはね?俺に対する恩を忘れちまった見てぇだな?チャルナ」

言葉こそ軽いものの、声はこの世界で生きる者のドスの利いた声が響いた。

こいつと会ったのは丁度通り名がついてすぐ位だった。

初めてのへまをしたときから世話になっていた。

が、それは昔のことだ。

俺は動揺がおさまり、また仕事の顔に戻った。

「今は関係ないだろう?それに始めに裏切ったのはあんたの方だ。」

そう冷静に返して、俺は移動しながら照準を合わせて拳銃を構えた。


「何だよ?薬を薦めたことか?それとも組に引き込んで殺しをさせようとしたことか?………にしても、あっさり蹴りやがったよな?後ろ楯がいればいつでも好きなだけ殺れるっつーのにさマジでもったんないやつだよ」

マシンガントークを披露するこいつ、楡崎 孝治の言葉を無視して俺は一発銃弾を放った。

が、狙っていた額から逸れ奴の頬をかすった程度で済んでしまった。



「うおぅ。危ないな。何?脳天狙ってたの?残念だったねぇ?チャル坊、って危ねっ!!」

敢えて心臓と頭部をもう一度狙うが、かわされる。まあ、完全ではないからある程度抉れてはいるが。

今までは知らなかったが、あれは全部てめぇの仕業か。


そうしている間にも、柳が小飼にしている清柳組の連中は、譲を連れて行っている。

それに、楡崎は何故此処に丸腰で立っている?

奴の服装はTシャツ、ジーンズで上には何も着ていない至って軽すぎると言っても良い格好だ。

それに、薬をやって神経でも麻痺しているからなのか、脇から血が出ているのに堪えた様子がない。

そう思ったのと、殺気に気がついたのは同時だった。

俺は斜め上からきた気配を反対側にんで避けつつ、その方向に一発放つと断絶間の叫びが聞こえた。

やはり、狙われていたようだ。

「ちぇ、何で避けるかな?って、危ねぇよっ!」

「囮だかなんだか知らないが、どちらにせよあんたは俺の獲物だ。」

でも、だからと言って銃弾を無駄にするわけにはいかない。

「ハッ、仕事熱心なこったな!チャルナ。これでも、喰らっとけ!!」

「!!………ケホッ、………くっ、催涙弾か!」

畜生、モロに吸っちまった。

気がつけば、俺は発生元から少し離れたところで膝をついていた。

「俺は今から譲と〇×13倉庫で会う約束があるから、じゃあね?」

何!?

「ゲホッ、まで!!何故譲を知ってるんだ!!?」

そう軽く叫ぶ様に言うと、一瞬キョトンとしたあと楡崎はニヤリと気持ち悪い笑みを浮かべた。

「だって俺あいつの彼氏だもん。」

まあ、最近すれ違ってたけどね?

そう言って嘲笑う楡崎の顔はどこか狂っていた。

こちらの様子確認なのか、近づいてきた。

不味い。

「そう言えばお前、最近譲と居たんだっけ?勘違いすんなよ?あいつの彼氏は俺だけしかなれないんだから。よっ!!」

完全に反応が遅れた俺に容赦なく横からきた楡崎の蹴りが、腹に入った。

「うっ、!」


痛てぇ。
けど、これ以上やられる気はない。

それに、これなら至近距離だ。

が、俺は撃てなかった。

「かはっ!」

「セーフか?ったく、失敗したら催涙弾使ってすぐ離脱しろっつったのによ。このアホ崎が」

しくった、まだこいつだけのはずがなかったのに何故油断した俺!

チクショウ。

俺は意識を手放した。





[*前へ][次へ#]

10/14ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!