[携帯モード] [URL送信]

コラボ小説
明かされた真実*



 あの後、顔を洗い、戻った神坂は、何故か騒がしくなっていた部署に首を傾げた。なにか、あったのだろうか?


「どうしたんですか?」

「お、神坂! 実はな、チャルナの顔が判明したんだよ!!」

「え!?」

「この前の事件の時に、ばっちり彼の顔を写した隠しカメラが見付かったんだ。これで、あいつを捕まえられるぞ!!」

 ひゃっほいと喜ぶ上司に、神坂は苦笑を浮かべる。チャルナが最初の事件を起こして3年。やっと、この事件に終止符を打つことが出きるのだ。上司だけではなく、神坂も少し舞い上がっていた。

「その写真ありますか?」

「これだ。な、ばっちりだろ」

「っ!?」

 上司に渡された写真を見た瞬間、神坂は大きく目を見開いた。血の気が引いてくのが嫌でも分かり、力を込めていないと持っている写真を落としてしまいそうだ。

 その写真に写っていたのは、間違いなく朧だった。


 朧がなんらかの犯罪に手を染めているのは分かっていた。けど、まさか、チャルナだったなんて。


「こんなのってないだろ……」

「神坂、顔色悪いぞ、大丈夫か?」

「大丈夫、です」

「大丈夫じゃないだろ。もう終刻だし、今日は帰れ。チャルナの件は俺達に任せとけ!!」

「そう、させていただきます」

 鞄を掴み、賑やかな部署から神坂は退室した。こんな事になるなんて、正直考えていなかった。

「会いたい」

 何故だが、朧に会いたくてしょうがなかった。彼がチャルナだと分かってしまったこの状況で、会って何を話せば良いのかなど全く分からない。けど、警察が彼を見つけ出す前に、会わなければならない。そんな気がしてならないのだ。


「せめて、連絡が取れれば……」

 呟いた瞬間、神坂の視界に写ったのは、指輪型爆弾。これには、確か盗聴機が……。

「そうだ!」

 答えてくれるなかんて分からない。下手をしたら、伝わってても無視されるかもしれない。それでも、これにかけるしかなかった。


 神坂は、指輪に唇を寄せる。彼にこの声が言葉が伝わるように。願いを込めて。

「……朧、さっき聞いてたと思うけど、君がチャルナだったんだね。全く気付かなかったよ。だから、君にいっつも刑事なんて合わないって言われちゃうんだろうね。ほんと、刑事失格だ。
顔が割れた以上、海外に逃げない限り、君が捕まるのは時間の問題だと思う。いや、あれだけはっきりと顔が写っていれば、もう国外にいけないようになってるかもしれない。一般人からの情報提供も近いうちに始まるだろうし」

 そう、捕まるのは時間の問題。自分で言いながら、その重みは否応なしに感じてしまう。もうタイムリミットへのカウントダウンは始まってしまったのだ。そして、この数字は止まることを知らない。


 だからこそ、早く朧に会わなくてはいけないのだ。

「朧、明日の夜10時に君と出会ったあの道で待ってる。もしも、この事を俺が他の人に言ったり、あの場所に来なかったら、この指輪を爆破させて良いから」

 最後の賭けだった。勝算の少なすぎる賭け。けど、神坂にとっては微かな希望の光だ。

「どうにかしなきゃな」


 明日までに出来ることは限られてるだろう。それでも、やらなきゃならない。それが例え、重大な規律違反だとしても。


 なら、部署に戻らなくては。そう思って神坂が来た道を戻ろうとした瞬間だった。

「ちょっ!! んん!」

 右にあった扉が不意に開いたかと思うと、腕を引かれ、部屋へと引き込まれた。刹那、手で視界を覆われ、鼻と口をハンカチで塞がれる。鼻につくような甘ったるい臭いを感じた瞬間、急速に霞む視界。薬が仕込まれていたのは一目瞭然だ。

 しかも、今神坂がいたのは、人気が少ない廊下。話内容を聞かれてはならないと思ってこっちに来たのだが、まさかそれが仇になるとは思ってもみなかった。

「おやすみ。神坂警部補」

 なんでこいつ、僕のこと知ってるんだ。そんな疑問が頭をよぎったが、その直後に、神坂は完全に意識を手離した。



[*前へ][次へ#]

9/14ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!