[携帯モード] [URL送信]

コラボ小説
裏切られるのは



頭脳明晰、顔にも恵まれて正義感も強い。

どちらかと言えば真面目でエリートといえばこの部署では大抵の人物が柳警視だと答えるだろう。

そんな柳さんに僕が出会ったのは、採用試験に合格して直ぐの時だった。


あの当時、柳さんはまだ警部で僕はまだ高校を卒業したばかりだった。


正確にいえば出会ったと言うよりこちらが一方的に見ていただけだったりするけども、当時既に今のカリスマ性と美貌を発揮していた柳さんを見て、

「僕、絶対あの人みたいになる!」なんて青臭い目標を立てて僕はがむしゃらに上を目指した。


お陰で今は普通ならまだまだ年数がかかるかもしれなかった警部補の座までトントン拍子に上がり、本部勤めにまでなった。

そこで僕は柳さんに再会した。

いや、一方的に知って一方的に憧れてただけだからちっと違うか。

同じ部署になって、仕事も大分難しいホシも増えたけどやりがいがあった。

ちょうど一年前だ。
いつものように聞き込みしたり、書類を押さえたり、これでもう逃げられるわけがない所まで追い込んだある大企業の汚職事件が流された。

柳さんに今回の資料を渡したときに聞かされた。


原因はその企業からの賄賂だった。

知ったのは理由を聞きに課長室に行ったときだ。

あのときは珍しく上司に対して怒鳴ったっけな。

「それでも警察か!!」何て言って。

今思えば、動かぬ証拠として写メってやればよかったな。
直ぐに懲戒免職にしてやれたのに。

それから、僕は元々無かったなけなしの正義感を完全に喪失していた。


そして、色々柳さん以外の上司に幻滅した一年が過ぎて二年目、今チャルナ関連の事件が舞い込んできた訳だけど………。

柳さん………あんたもなのかよ。
気分はあれだ。シェークスピアだ。

もう幻滅しすぎで笑えてくる。


「別の事件の予感………なわけねぇか。」


「何がだい?神坂警部補。」


「いや、何でもないです。所で何かご用ですか?」

噂をすれば陰か。

「ああ、チャルナの案件でな。」


言われた資料を柳さんに渡す。
僕がまとめていたのは最近の動向だった。


そういや不思議だ。
チャルナは案外目撃者が多いが、そのわりに被害者が出た現場に居合わせたという情報は当時その現場付近にいたはずの被害者の身内すらも目撃したものが居ないらしい。

ただ、防犯カメラに写った事があるケースが一件有ったらしくそこから容姿が出された………といっていた気がする。



あ、そう言えば。

「チャルナがいる場所のほとんどが別件の事件現場ばかりだ。」


一番最初に僕らの課に持ち込まれた時は翁浪会が潰されていた。

後に調べたら裏組織で薬や拳銃を所持しているような過激派で、あの周辺にいるチンピラや暴走族のバックにいる様な組織だった。

一般人を巻き込むような障害事件を起こしてしらを切ったり、裁判に公訴しようにも公訴できなかったなど、大分手をやいていた相手があっさり潰された。


そして、今回の事件は大企業のk会社の汚職が発覚した。

裏組織と手を組み、法外な利益を上げ脱税までしていた。

ただ、おかしなことに全部チャルナが引っ掻きまわすように暴れてくれたお陰で分かったことだった。


「確かにな。だが、問題は潰しかた………だろ?」

「まあ、確かにやりすぎですよね。初めて回ってきたやつなんか、構成員のほとんどが仏でしたしね。」

あれはマジで1ヶ月位肉が食えなかったな。

なんて思いつつ手元をみた。


そういやあいつ物騒な物おいて行ったよな。
これ盗聴器とか付いてたりすんのか?
あいつがチャルナ本人だったら笑える。


………まあ、最悪の場合は良いか。

いっそこの職場の膿も掻き出してくれねぇかな。

「ん?その指輪………」

「へ?ああ、婚約したんですよ。」

嘘だけど。

まあ、これが無難だよな?
おあつらえ向きに位置が位置だしな?

それで話が流れる………

「いつだ」

「え、あの?柳さん?」


はずだったんだけど?


まあ、取り敢えずあれだ。

「柳警視、ここは公の場ですのでプライベートに口を挟まないで下さ………って、ちょっと!?」

「こい。」




そう言ってつれてこられたのは外だった。

扱いは昼休憩らしい。
そんな勝手にしていいのか!と、思ったがちょうどその時間になった。


ちくしょう逃げらんねぇ。







「相手はどんなやつだ?」

そう言って両肩を路地の壁に押し付けられた。

勢いよくぶつけられたせいで、地味に痛い。

「いや、だからプライベートですよ柳さん。」


何でこんなしつこいんだこの人。

「大体、関係ないでしょ。何でそんなに干渉するんですか?………流石に不快なんですが?」

僕は、柳さんを軽く睨んだ。


「………そうか。それはすまない。」

柳さんは少し傷付いたように俯くと俺の肩から手を離した。

「邪魔。」

そう言って、聞き覚えのある声がちょうど道の真ん中辺りにいた僕達を軽く突き飛ばした。

「うわっ………て!きみ!………突き飛ばすことはないだろう!?」


それはやはり今朝家で別れた少年………いや、青年?だった。

危ない、変なこと口走るところだった。

「さぁな?………(情報提供ありがとう)………まあ、すまない。失礼する。」

「え、ちょっと!?」

僕の耳元で一瞬そう呟くと、彼は行ってしまった。

「………知り合いか?神坂。」

「いや、違いますけど?」

「そのわりには随分親しそうだったが?」

「何ですか、なにがしたいんですか柳さん?」

今度は押さえつけられはしなかったが、再び背中に壁がついた。



「………なぁ、神坂。その指輪送ってきたのもしかして男か?」

「ちがいます。確かに逆プロポーズでしたけど、ツンデレで料理が得意ないい子です。大体僕は、ゲイじゃないですよ?」

何て思いっきり嘘っぱちを吐きつつ、柳さんから距離をとる。
まあ、性対象は女性なのは本当だけれども。


「お前、彼氏居たこと有るだろ?」


「黙れ。」

自分でも驚くほどの低い声でそう言うと、柳さんも驚いたのか一歩後ずさっていた。


ああ、もう何なんだよ今日は………。








[*前へ][次へ#]

6/14ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!