[携帯モード] [URL送信]

コラボ小説
不思議な青年*


 神坂が住んでいるのは、1LKの比較的普通のマンションだ。元々神坂が綺麗好きなのか、職業柄あまり帰って来ないせいか、男の一人暮らしの部屋にしては、かなり整頓された部屋だ。

 まさか、この部屋に銃を突き付けられた状態で、帰ってくる日が来るとは思ってもみなかったが。いや、普通の人はこんなことは体験なんか絶対にしないだろう。

「電気つけて良いですか?」

「付けるな」

「いや、暗くて場所が分からないのですが」

「……つけて良いが後ろを振り向くな。見つけ次第、明かりは消せ」

「分かりました」

 ぱちんと軽い音と共に鮮明になる部屋に、神坂は目を細めた。やはり、暗い所から明るい所にいくのは目が痛くなる。

「えっと、あった」

「なら消せ」

「……後ろを振り向かないと消せないんですけど」

 それは、そうだ。明かりの主電源は部屋の入り口であり、彼の背後にある。この状態では、後ろを向かずに電気を消すのは無理な話だ。

「めん、どう、だな」

 荒い呼吸と共に、ずるりと背中から銃の感触が消えたかと思うと、がたんと何かが倒れた音が背後から聞こえた。見なくても分かる。後ろにいた奴が倒れたのだ。

「おい!」

形振り構っていられない。そう思って振り返った神坂は、微かに目を見開く。

 そこにいたのは、二十代前半位の青年だった。

 電気の光で綺麗に輝く黒髪。閉じられた瞼を縁取る少し長めの睫毛。薄い桜色の唇。すっと通った鼻筋。真珠のような乳白色の肌。武骨な黒い銃を握る、細く長い指。

 一瞬、人形でも見ているんじゃないかと思うほど、その青年は綺麗だった。太ももから今も流れる血さえなければ。

「思ったよりも深いじゃないか」

 じゃなきゃ、貧血で倒れる筈がない。顔面蒼白な顔を見れば、かなり危険なことはありありと分かった。

「今から救急車を呼んでも微妙だな」

 それに、彼は救急車を拒んでた。理由は分からないが、彼が回復するまで呼ばない方が良いだろう。

「そう考えると、僕が処置するしかないか」

 神坂は、軽く溜息を吐きながら、救急箱とは別の箱を取り出す。中には、手術に使いそうな器具が無菌パックの中に入っていた。

「実は、医師免許持ってたりするんだよね」

 実家が医者家系だったため、無理矢理勉強させられたが、まさかこんな所で役に立つとは思ってもみなかった。

「死なれたら後味悪いし」

 人助けも警察の仕事でしょ。そんな事を思いながら、神坂はピンセットの入った無菌パックを破いたのであった。
 

[*前へ][次へ#]

3/14ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!