RE:START(男主) 彼らの気持ち 「俺の、ポケモンに、しろって?」 「ワニ」 「嫌だ」 「ワニ!?」 なんで!? とかなり驚いているワニノコに俺が何故と聞きたい位だ。 今は、博士の手伝いをしているが、昔はこの手で人を殺していたのだ。それこそ、手が真っ赤に染まって見えないほど。 そんな人間が、生き物の親になるなんて馬鹿げてる。それに、自分のポケモンなんかにしたら、清い存在である彼らの未来が血塗られそうで怖いのだ。 だから、博士からこの世界の常識を聞いたときに誓ったのだ。俺は、ポケモンを持たないって。 「ワニ〜、ワニワニワニ!」 「うるさい。とにかく、ゲットしない」 「ワニワ!?」 「お前は、博士、のだ」 「ワ、ワニ!?」 ねぇ、なんでだよ。僕が、最初にコウの足噛んだからか? それなら、謝るから。もう二度と噛んだりしないから。お願い、そんな悲しいことを言わないで。 そう必死に足にすがりついてくるワニノコに、俺は気付いたら叫んでいた。 「俺は、人殺し、なんだ!!」 「ワ、ワニ?」 「物心、ついた、時には、もう、人を、殺してた。それしか、生きる、方法を、知らな、かった。俺の手は、真っ赤だ。俺、自身も、汚れてる。そんな、俺に、お前等を、持つ、資格、なんて、無い!」 言い切った瞬間、咳が喉の奥から出てくる。昔雇われた男に、「暗殺者に声は必要ない」と喉を潰されかけたせいか、長く喋れないのだ。お陰で、言葉は途切れ途切れになるし、あまり長く喋ると、咳が出てくるしで良いことなど全くない。 「ワニ〜」 「大丈夫」 「ワニワ。ワニワニワニ」 「ブイ」 「……」 2人の言葉に、俺は目を丸くする。まさか、人殺しでも構わないと言われるとは思ってもみなかった。 「ワニワ、ワニ〜」 「ブイブイ」 例え、どんな過去がコウにあったとしても、コウのポケモンになりたいって気持ちは変わらないよ。 「いいのか、俺で」 こんな……汚れた果てた俺なんかで。 「ワニ」 「イーブイ。お前は、無理矢理、付いて、来なくて、良いんだぞ」 「ブイブイ」 「……」 2人共、自分の意志で俺に付いて来てくれると言ってくれた。その事が嬉しくて、思わず涙が溢れる。 「あり、がとう」 心を込めた感謝の言葉に、ワニノコとイーブイは、嬉しそうに返事をくれる。 こうして、俺に初めての手持ちであり、大切な家族と言うべき存在が出来たのであった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |