RE:START(男主)
素直な感想
「ワニーワニワニ、ワ〜」
「……なんで、そんなに、元気?」
ヨシノシティを抜け、30番道路。元気ハツラツとしか言いようがないワニノコと共に、俺は草むらを歩いていた。
元々、バトルが好きらしいワニノコは逃げる間もなく、次々と飛び出してきた野生ポケモンを倒してくれる。草以外の障害物がない道はとても歩きやすい。
「ワニ〜」
「よしよし」
誉めてと言わんばかりに、俺に近付いてくるワニノコの頭を撫でる。ひんやりとした感触が結構気持ちいい。
「ワニ」
「だめ」
「ワ〜二〜」
どさくさに紛れて手に噛みつこうとしたワニノコを叩く。最近知ったが、どうやら、俺に対するワニノコの噛みつきは、愛情表現らしい。あんな痛みを愛情表現と言われてもかなり困るが。
「ほら、行く」
「ワニ」
ポンと体を押すと、とてとてと草むらを歩いていくワニノコ。なんだか、ねじ巻き人形みたいだ。
「ブイー!」
「ワニ? ワニワ〜!!」
どいて〜と言う声が聞こえた瞬間、目の前にいたワニノコが吹っ飛んだ。どうやら、草むらから出てきたポケモンに、たいあたり辺りを食らわされたらしい。
「大丈夫、か?」
「ワニ!」
うん。健気だ。
「ブイ」
「ん?」
どけと言われたような気がして、そちらを見ると、ボロボロのポケモンが俺に対して威嚇していた。
ウサギのような茶色耳。可愛らしい体つき。ふわふわの襟巻きのような毛並み。きっと抱き締めたら気持ちいいだろう。じゃない。
「イーブイ、か。……ん?」
ここら辺にはいない筈なんだけどな。と思っていると、イーブイは、俺にタックルしてきて、オマケのように腕に噛みついてきた。お前はワニノコか。
「まぁ、ワニノコ、よりは、痛く、ない」
このまま捕獲と、噛まれていない手でイーブイを押さえつけると、イーブイは俺の腕の中で暴れ出す。これ位なら、押さえるのは簡単だ。
「ワニノコ。いったん、ヨシノ、シティに、戻る」
「ワニワ!」
ワニノコもどういう状況か理解したらしい。了解! と言うと、来た道を戻っていく。うん。このおつかいで、ワニノコの株がかなり上がった気がする。
「おい、そこの奴!」
「ん?」
さて、ヨシノシティに行くかと踵を返した瞬間、聞こえた声に後ろを向くと、黒ずくめの怪しそうな男が立っていた。なんでこんな所にいるんだ? とか、俺になんの用だ? とか、色々と思うことはあるだろう。
けど、俺が最初に思った事はそのどれでもなかった。
「服、ダサい」
「ワニ」
「ブーイ」
「うるせぇ! 制服なんだよ、悪いかこの野郎!!」
いや、逆ギレされても困るんだが。
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