RE:START(男主)
お化けと復讐B
※グロ表現あり。
ポケモンタワーの最上階。そこには、ロケット団が集まり、ゲラゲラと下品な笑い声を上げていた。
彼等の周りには、普通なら感じる事のない濃い鉄の香りと原形を留めない肉片。そして、べったりと紅色が付いた、頭蓋骨が転がっていた。
「いやぁ、大漁大漁」
「まさか、こんなボロ儲け出来る話が近くに転がってるなんて思ってもみなかったぜ」
「ほんと、これぞ悪の組織ロケット団って感じだな!!」
「ははっ、確かに」
そして、また上がる笑い声。その声の中に、まさか悲鳴が混じるとは、彼らは予想していただろうか?
「ぐわぁ!」
「ど、どうしたんだ!?」
慌ててそちらを見た男は、目を見開く。隣にいた男が血に塗れて倒れていたのだ。手足が痙攣のように動き、口から意味のない言葉しか出ていないが、どうやら生きているようだ。だが、速く手当てをしないと危ないのは一目瞭然。
「くそ、誰だ!」
男は慌てて、モンスターボールを取り出し、投げようとした。しかし、そのボールは、弧を描く事無く、地に落ちる。刹那、視界の端で散る紅。身体中に走る激痛。
モンスターボールを持っていた腕を切り落とされたのだと男が気付いたのは、無意識出た絶叫の後だった。
その後も、近くにいた仲間達はズタズタにされていく。あまりの激痛に響き渡る悲鳴の数々。だが、誰一人その命を取られる者はいなかった。まるで、死ぬ最後まで、その激痛を絶望を味わえというかのように。
「……こいつ?」
不意に聞こえた声に、腕を切り落とさた男は顔を上げる。そこにいたのは、黒を身にまとった青年。血の臭いは、酔いそうな程濃く、男からは見えないが、周りの仲間達は悲惨な事になっているだろう。なのに、目の前にいる飴色の瞳には、恐怖も怯えも浮かんでいない。
その辺に転がる石を見ているかのように、青年の目は静かに男を見つめている。が、次の瞬間、男の体に激痛が走った。
「ぐぁあ!!」
声と共に、びしゃりという水音が辺りに響く。だが、青年は全く瞳を揺るがさない。それがとても異様で、とても恐ろしい。
青年――コウは、男の背中に刺さった刃を引き抜くと、足で蹴飛ばし、仰向けに転がす。そして、その腹を内蔵が見えるほど、深く切り開いた。男の絶叫が辺りに響くが、まだ死なないだろう。血はあまり出ないように、切り裂いたし。
「仕上げ」
ぼそりと呟いたコウは、腸や胃、肝臓、肺などの臓器を皮手袋をした手で鷲掴みにすると、持っていたナイフで死なない程度に切り裂いていく。想像を絶する痛みに、男は何度も失神するが、その度、コウは男の意識を引き戻し、また臓器を貫く。
まるで魚や何かを捌くように、淡々と事務的に。その姿は、まるでロボットのようにも見える。
臓器から噴き出した血のせいで、皮手袋が真っ赤になり、刃も血や脂肪のせいで刃こぼれし始めた時に、その声は聞こえた。
「うわ〜すごいね」
ナイフをもう微かにしか動いていない男の心臓に突き刺したコウは、後ろを振り向く。そこにいたのは、この異様な雰囲気に場違いな笑みを浮かべたノアと気持ち悪そうに瀕死の男達を見るシャインだ。
「けど、びっくりしたよ。まさか、おにぃちゃんからでんわがかかってくるなんて、思わなかったもん」
「その内容が、死体回収というのも驚かされましたけど」
「ごめん」
「ううん。どうせこのうらぎりものは、近いうちに処刑される予定だったから、丁度良かったよ!」
「まぁ、ここまで残酷にやる予定はありませんでしたが」
「シャイン文句ばっかり〜」
「これを見れば文句の一つでも言いたくなりますよ。誰がこれを片付けると思っているのですか」
「ん〜。アルティナ?」
「……アルティナは、血を見た瞬間、気絶するほど苦手なのですよ」
「大丈夫。さいしゅうてきにはやってくれるから!」
「は〜」
ため息を吐くシャインとニコニコと笑うノア。正直、こんな場所で内容がもっとマシなものだったら、一般の世間話にしか聞こえなかっただろう。
「それじゃ、よろしく。あと、この、コートと、皮、手袋も、一緒、に、処分、して、くれると、嬉しい」
「分かった! それじゃ、ユッキーによろしくね!!」
ぶんぶんと手を振るノアに軽く手を振ったコウは、あなぬけひもを使った。瞬間、新鮮な空気が頬にあたる。先程の鉄臭さが嘘のようだ。
『アリガトウ』
そんな声が聞こえたと思ったら、ふっと体の中にいたなにかがいなくなる。多分、ガラガラが成仏したのだろう。
これで任務は終了だ。
「帰ろ」
呟き、コウはポケモンセンターへと足を進める。
その瞳に『後悔』や『罪悪感』という概念は一切浮かんでいなかった。
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