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RE:START(男主)
変態と拉致A


「……」


 クリムが洞窟に入って数時間経った。未だに、3人は洞窟の中から出てこない。


 既に周りは暗くなり、街の灯りが遠い此処は、人の目では辺りを識別し難い暗さになっている。時間は分からないが、もうすぐ深夜に入るであろう時間帯だろう。


「遅い」


 待ってろとは言われた。だが、これはあまりにも遅過ぎる。コウは、立ち上がると、洞窟へと足を向けた。


 入るなとクリムには念を押されたが、もう我慢の限界だ。もしかしたら、3人共野生のポケモンに襲われているのかもしれない。そう思ったら、今まで感じなかった。否、感じないようにしていた不安が一気に溢れ出した。無事でいて欲しい。そう思いながら、洞窟内へと足を踏み入れた瞬間、その声は響いた。


「やっと、入ってきたか」


「え? ……つっ!!」


 男とも女ともとれない声がすぐ背後から聞こえ、瞬時にそちらを見ようとしたコウ。だが、縛り付けられたかのように体が動かない。何故だが分からず混乱状態に陥ったコウを嘲笑うように、また声が響く。


「ただのかなしばりだ。本当に人間は愚弄な行動しかしないな」


「……」


「本当は、人間がこの場に入る事自体、気に食わんし、今すぐ殺したい気分だ。だが、私はお前に興味がある。感謝しろ人間。まだお前は生かしといてやる」


 嘲笑と共に、いきなりコウの目の前に現れたのは、長身の美青年だ。長い紫苑の髪。深海のような深い海色の瞳。丈の長い薄紫のローブには、藤色の刺繍糸によって複雑な紋様のようなものが描かれたいた。


 彼が纏っているのは、クリム達と同じような気配。それに、さっき彼はかなしばりと言っていた。周りにポケモンがいないところを見ると、彼がかけたものだろう。


「君、ポケモン?」


「人間は私の事をミュウツーと言うな。私はあまりのこの名は好きではないがな」


 ミュウツー。その名には聞き覚えがあった。たしか、ミュウの遺伝子を組み替えて作られたポケモンだ。そして、ポケモンの中で一番凶暴な心を持つと言われてる。


 なにしろ、力が強すぎて彼を研究していた研究所が、壊滅状態になるほどだ。その後、行方不明になったとウツギ博士は言っていたが、まさかこんな所で見ることになるとは思わなかった。


「さてと、話は終わりだ。そろそろあいつが、私の部下達を倒し終わる頃だろう。その前に、君を見つからないように隠しておかなくてはな」


 あいつって、誰だ? なんで、自分を隠すんだ? 様々な疑問が浮かび上がってくるが、それは解決することなく、コウの思考を混乱させるスパイスにしかならなかった。


 ミュウツーは、未だ動けないコウの鼻を摘むと、口に小さなビンを押し込んだ。ビンの中に入っていた液体が、口に零れだし、苦い味が舌いっぱい広がり、コウは顔をしかめる。毒か何かのは考えなくても分かるので、吐き出そうとした。


 だが、ビンを引き抜かれた瞬間、口を塞がれ、それは叶わなかった。


「飲め。それまでどちらも離さない」


「……」


 暫くの間、ミュウツーを睨み付けていたコウだが、流石に息が苦しくなったのか、液体を飲み込む。途端、訪れる強制的な眠りに、体から力が抜けた。


「これは、もうお前には必要ないな」


「あ……」


 ミュウツーの手に握られている5個のモンスターボール。そのうちの2つが激しく揺れているのが見えたが、今のコウにはどうにもできない。


「おやすみ」


 その声が聞こえる前に、コウの意識は闇へと堕ちた。



 

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