RE:START(男主)
クジと温泉C
次の日。俺達はシズクに連れられ、煙突山の中にある洞窟に来ていた。山に呼応するかのように噴き出すマグマは、かなりの温度を持っているのか、離れた所にいるのにかなり熱い。
「ここです」
そう言って、シズクと辿り着いたのは、最奥部らしい場所にある、マグマの湖。マグマが剥き出しになっているせいか、他の場所よりもかなり熱い。隣にいるクリムはケロッとしていたが。
「だせぇなコウ。こんな熱さへじゃねぇだろ」
「クリムは、炎、タイプ、だから、でしょ」
「へ〜、クリムってなんのポケモンなの?」
「女、喋り掛けてくんな。燃やすぞ」
「なんでそんなに、皆で私に冷たいの!!」
うわーんと泣くシズクを慰めるヨウジ。なんだろう、この構図。
「シズク、それで、会わせ、たい、奴って?」
「今から呼ぶから。アカリ〜」
シズクが呼んだ瞬間、マグマの中心が盛り上がり、爆発したかのように噴き出した。瞬間、現れた影は、一瞬で人間の姿を取ると、シズクに抱き付く。
「シ〜ズ〜ク〜。会いたかったよ〜」
「久し振り、アカリ」
アカリと呼ばれたのは、十代前半の女性だった。
ルビーのような紅の髪。ほのういしのような綺麗なオレンジ色の瞳。健康的に焼けた小麦の肌。黒生地で出来た短パンと薄いシャツには、輝く紅色の刺繍糸で複雑な紋様が描かれていた。
「本当に久し振り! マグマ団だっけ? あれからシズクが助けてくれてくれた以来だね! シズク全然来てくれないから心配してたんだよ」
「ごめんね」
「ううん。来てくれただけで嬉しい。そう言えば、そっちの人は?」
「コウさんとヨウジさんとクリムさんだよ。私の友達」
不審そうに俺達を見ていたアカリだが、シズクの言葉に、ぱっと顔を輝かす。
「こんにちは、グラードンのアカリです! ファイは、久し振りかな」
「そうだな。相変わらず、馬鹿っぷり発揮してるみてぇじゃねぇか」
「あたしは、馬鹿じゃないもん!」
ぷくっと頬を膨らますアカリから視線を外した俺はクリムに向かって首を傾げた。
「ファイ、って、クリムの、事?」
「あぁ、一部の奴にはそう呼ばれてる」
「グラードン、とは、知り合い?」
「まぁな。コイツの両親とちょっとあって知り合ったんだ。……マグマ団の時は、まだこいつ産まれたばっかだったから、ヒヤヒヤしたぜ」
「ファイ心配して、騒ぎ治まってからきのみ沢山持って来てくれたもんね!」
「うるせぇ、パルが持ってきたやつが余ってただけだ」
「カイ兄さんにもたまに持ってってるんでしょ。水苦手なのに、いつもありがとうって言ってたよ」
「あの引き籠もり、喋りやがって」
「クリムって、結構、優しい、よね」
「断じて違う!」
真っ赤にした顔のまま怒鳴られても、説得性は全く無い。けど、これでたまにクリムがいなくなる理由が分かった。
「まさか、グラードンを見れるなんて」
「前にマグマ団とアクア団の抗争を止めるときに、会ったんです。それから、たまに会いに来てて」
「シズクね。此処から出れないあたしの為に、色んな話してくれるんだ。だから、シズク大好き!」
「ありがとう、アカリ」
抱き合う2人に、俺は少し苦笑した。なんだが、2人が姉妹みたいだ。
「さてさて、それでは、おやつタイムといきますか! 今日はアカリの為に沢山持ってきたよ〜」
「わーい。おかし〜」
「女、俺にも寄越せ」
「ついでたから、フエンせんべいも食べる?」
がさこそとおかしやらせんべいを出し始める彼らに、俺はパタパタと手を団扇代わりにしながら、一言。
「外で、やろうって、いう、選択肢、は、ないの?」
ポツンと呟いたその問いに、残念ながら、誰も答えてくれなかった。
数十分後、熱さにバテた屍が3体できた事は、言うまでもない。
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